めざすは一流MISS料理人:マンジャペッシェ調理スタッフ・雨宮佳代子さん
「手をかけたシンプルさ」で人気のトラットリア マンジャペッシェ。そこで前菜を担当する雨宮さんは、二年前にイタリア修業から戻ったばかりの気鋭の女性料理人だ。
「OLから転職し二七歳からの遅いスタートですが、この仕事に変えて本当によかったと思っています」とまっすぐな瞳をこちらに向ける。栄養士の資格をもち、食品研究の会社で仕事をしていたが、「つくるほうが面白そう」と、まずはお菓子店で修業をスタート。その後、自宅近くのイタリアンの店で二年働く。
「厨房スタッフ二~三人のアットホームな店で、オープンキッチンだったため、お客様に厳しいことも含めていろいろ言っていただき、非常に勉強になりました」と振り返る。
その後、イタリア研修に参加し、現地で約二年修業。
「南部から北部までまわり五店舗で働きましたが、うち二店が女性シェフの店。かなり年配の女性シェフもいましたが、すっごくパワフルで驚きました。向こうの人はいくつになってもお化粧はバッチリ、恋も現役という感じで、働くことも含めて人生を謳歌しているんですね」
野菜料理好きの雨宮さんは、とくに地元の普通の人が食べる料理に興味があったが、同じメニューでも、それこそ町によっても違うことを発見し、イタリア料理の深さ、面白さに圧倒されたという。
帰国後、紹介を通じていまの店に。
「長く働いているスタッフが多いだけに、チームワークがすごくいいんですね。自由に任せてもらえるし、食材を厳選して生産者などから仕入れるやり方など、いろいろ学ばせてもらっています」
雨宮さんは「二年後の三五歳で独立して店をもつ」と宣言している。「のん気な性格なのでそう言っておかないと、いつまでも実現しない」(笑)
どんな店にするかはまだ未定だ。「マンマの料理の店」あるいは「一日中気軽に立ち寄れるカフェ」、はたまた宿泊・限定客相手の「オーベルジュ」スタイルにもあこがれるという。
いずれにしても「イタリア仕込みの温かく、ひと手間かけた料理」と「パワフルさ」が身上の店になるに違いない。
◆プロフィル
あめみや・かよこ=1968年東京都生まれ。母と姉の3人暮らし。「食べることにはうるさい」家系だが、「お酒に弱い」のがネックとか。「ワインの勉強」が今後の課題という。息抜きはドライブ。
◆料理人を目指す女性の後輩へ
カゼや疲れなどで体調が変わると、舌も狂ってきます。私はそういう時は濃い味付けになりやすいので、「味の引き算」で調整しています。トータルで自分の体を知り、管理できることが仕事には必要です。
◆シェフからひと言 小川利幸さん
雨宮さんはイタリアを感じさせてくれる料理をつくれる人です。これからは厨房も女性を入れていかないと時代に遅れてしまいます。体力面などフォローしていきながら、女性にも活躍していってほしいと考えています。
◆いちおし食材 館山のキンメダイ
店の好評メニューのひとつがキンメダイを使った料理です。カルパッチョにしたり、冷たいパスタと合わせたり、切り身にしてグリルやバター焼きなど「お好み料理」オーダーにも対応。魚の脂ののり具合と鮮度がものを言いますから、仕入れは名郷船形にある「まるい鮮魚店」からじかで仕入れています。とくにこれから3月にかけては一番うまい時期ですね。
◆「トラットリア マンジャペッシェ」=渋谷区千駄ヶ谷三‐五〇‐一一、明星ビル1F、電話03・3403・7735