地域繁盛店(京都)低価格メニュー編:グリル・喫茶 アローン
今年二八年目を迎える「グリル・喫茶 アローン」は、昔ながらの本格的な洋食を味わえる店。ランチタイムは“昼のサービスメニュー”として、日替わりランチ六八〇円~など約二五品を低価格で提供する。ボリュームたっぷりでお得感いっぱいだ。
正面に京都市役所があることから職員御用達のランチスポットになっていて、食欲旺盛な学生たちにも人気がある。この店はなんといっても、お皿いっぱいに盛り上がった大きな丸いオムライス五八〇円が有名だ。一人前でコメ二合、卵二個半~三個使うというから驚く。
実はこのオムライス、調理に手間がかかることから、オープン当初は希望があれば作っていた隠れメニューだったが、八年前、雑誌に紹介されて話題になったのがきっかけで正式メニューに。以来マスコミに繰り返し取り上げられて全国的に知れ渡り、一時はオムライスを求める客の列が一日中絶えることがなかったほどだったとか。
オーナーシェフ・川西平(おさむ)さんは「オムライスのおかげで娘二人を育てられたようなもの(笑)。若い客層が増えるきっかけにもなった」と振り返る。今も遠方から食べに来る人のために値段は当初のまま。気取らない店のムードも新たなファンを増やしている。
◆グリル・喫茶 アローン(京都市中京区寺町御池上ル上本能寺前町、モーリスビル内、電話075・221・3923)
◆ひと言 川西平オーナーシェフ
ほとんどのメニュー価格を開店当初のままにおさえながら、「お腹いっぱいになる喜びを味わってほしい」と、ボリュームたっぷりの料理を提供し続ける川西さん。「飲食店の入れ替わりの激しい通りでいつの間にか一番の老舗になった」理由を、「常連を飽きさせなかったこと」という。「日替わりランチのメニューを三六五日すべて違う内容にしたことも。毎日が真剣勝負。市役所の職員さんのおかげで腕を磨くことができました」(笑)
◆オムライス(580円)
直径二八センチメートル、高さ約一〇センチメートル。ユニークな丸い形は、大量のご飯を卵で巻くのに通常のやり方では時間がかかりすぎる、と編み出したもの。フライパンに卵を流してご飯を乗せ、そのまま皿にひっくり返すだけといたってシンプルだ。コメはコシヒカリのすし米。ベタつかないよう、ガス火で少し硬めに炊きあげている。肉は「鶏よりうまみを出すので」と大きめにカットしたベーコンかハムを使用。仕上げには自家製リンゴソースがかかる。
◆Aランチ(680円)
日替わりの魚と肉料理にたっぷりのサラダ、パンかライスが付く。毎日オーダーする常連客も多いので、川西さんは、ディナーと同じ感覚で、バランスを考えながら日々のメニューに趣向を凝らす。調理法や素材、ソースを替えて組み合わせることでバリエーションは数百種類にも及ぶそうだ(写真はエビフライと、たまり醤油のソースを添えたポークの照り焼き)。オムライスに次ぐ人気メニューになっていることが努力の成果を証明している。
●愛用食材 超特選タマリWhite Wine
とろりとしたコクと甘みのある刺身用のたまり醤油と、料理用白ワインは、照り焼き用ソースに欠かせない存在。「たまり醤油のソース」の名でランチ時にも活躍する。肉を炒めたフライパンに、白ワインとたまり醤油を入れて水でのばし、調味料を加えて片栗粉でとろみをつける。川西さんが修業時代に師匠から伝授されたこのソースはまだ洋食が珍しかった当時、なじみの薄い料理に和風の味付けで親近感を与えることにつながったそうだ。
◆盛田(株)/名古屋市中区栄一‐七‐三四、電話052・229・1606