施設内飲食店舗シリーズ 御殿山ヒルズ(東京・品川) オフィスなど3施設複合型
JR品川駅から歩いて五、六分。「御殿山ヒルズ」は地上二一階、地下三階の御殿山森ビル(事務所棟)、地上二五階、地下三階の御殿山タワー、およびホテルラフォーレ東京(住宅、ホテル棟)の三施設から成っている。
これらビル施設には銀行や飲食、物販などの店舗も出店しており、複合型都市施設として機能している。施設のグランドオープンは平成2年7月。森ビル開発㈱(本社・東京)が、昭和62年10月から地域の再開発事業として総工費四八〇億円を投じて完成させたもので、近接地の大崎ニューシティと補完し合う先端(インテリジェント)都市施設としての役割も果たしている。
地域の開発面積は九四〇〇坪、ビル建築面積三五〇〇坪、延床面積約三万五八〇〇坪で、うち事務棟の御殿山ヒルズが一万四七〇〇坪、住宅・ホテル棟の御殿山タワーおよびホテルが一万四一五〇坪。このほかに約四〇〇台収容の駐車場が六九七〇坪という内容。
御殿山は、江戸時代からの地名で、ここに徳川家康が狩猟のときに休息所を設けたことから、その名が付けられたと伝えられており、桜の名所として江戸庶民にも開放された場所だという。
このため、その歴史的由来を再現するためにも、サクラの木をはじめ、モミジ、コナラ、カツラ、ツバキ、サツキ、アジサイ、ハナショウブなど四季折りおりの樹木を植え、地域の住民も自由に楽しめるパブリックスペースとなっている。
事務棟にはすでにイーストマンコダックグループ、オムロン、村田機械、大東建設、メンターグラフィックスジャパン、住江織物などの企業が入居しており、ハイテクオフィスとしての機能も発揮している。
住宅・ホテル棟は、一〇五戸の賃貸住宅と客室数二五〇室の都市型ホテルの二つの施設機能で構成している。ホテルは会員制ホテルだが、一部フリーの宿泊機能も備えている。
オフィスと住宅、ホテル宿泊機能というのは、極めてバランスのとれた施設構成だが、これはまた独自の開発コンセプトと近隣地の品川プリンスホテルや新高輪プリンス、ホテルパシフィック、東武ホテルなど地域ホテル群との差別化を意図しての施設展開で、御殿山ヒルズは都市型ホテルを核としていながら、その運営形態は会員制のアーバンリゾートというスタンスで、森ビル特有の計算された都市施設を実現している。
一方、同施設群での就業人口は約二五〇〇人であるが、地域への一般来場者も一日平均同数程度あるとしており、トータルするとこの地域での施設人口は一日五〇〇〇人ということになる。
このため、これら施設人口の飲食需要に対応するため、当然のこととしてホテル、オフィス棟に和洋中の飲食施設を展開、オフィスの昼食需要をはじめ、宿泊、外来者の外食ニーズに対応している。
ホテル内の飲食施設は、一階にアトリウムラウンジ「ボア」、二階日本料理「狩衣」コーヒーハウス「セリーズ」、中国料理「園林」、テラスバー「リージェント」、二六階フランス料理「あんてぃーぶ」、鉄板焼「八つ山」(ガーデン)の七店舗を展開しており、各店舗とも都心の一流ホテル並みに高いグレードをアピールしている。
・アトリウムラウンジ「ボア」‐ホテル一階、高い天井、ガラス張りの壁面で、ゆったりとした空間を訴求している。
メニューはコーヒー、ソフトドリンク、アルコール、ケーキ類が中心で、ドラフトビール八〇〇円、カンパリソーダ九〇〇円、ウィンナーコーヒー九〇〇円、ダージリン七〇〇円、ケーキ各種六〇〇円など。
・コーヒーハウス「セリーズ」‐宿泊客の利便性を第一としており、朝6時30分から夜12時までの営業。もちろんメニューも朝、昼、夜の特色をもたせているが、朝はアメリカン朝食一八〇〇円(洋食)、セリーズ朝食一七〇〇円(和食)、昼はランチ一三〇〇円、夜三〇〇〇円の定食。
◆ハイグレード飲食店を集結
・仏蘭西料理「あんてぃーぶ」‐最上階のフロアで一流シェフが作る料理を提供するということであるが、やはりポストバブル経済後は企業などの接待利用が二~三割ダウンしている。営業時間午前11時から午後2時、午後5時から同10時までで、定食メニューとして二万円、一万五〇〇〇円、一万円の三種をラインアップ。
・鉄板焼「八つ山」‐仏料理と同じ営業形態で、日本庭園と接するロケーションにあることから、季節感と野趣味を売り物にしている。肉材はもちろん最上級の松阪牛や神戸牛。メニューはランチ三〇〇〇~八〇〇〇円。ディナー八五〇〇~一万五〇〇〇円。
一品メニューはエスカルゴのキノコ詰ガーリックバターソース二〇〇〇円、伊勢エビの鉄板焼き五〇〇〇円、特選神戸牛フィレステーキ八五〇〇円など。
・中国料理「園林」‐テーブル、個室とある客席数二〇〇席の広い店舗で、昼の定食メニュー一三〇〇円、三五〇〇円、夜四〇〇〇円、一万三〇〇〇円に加え、卓料理一人六〇〇〇~二万円もラインアップしている。
・テラスバー「リージェント」‐カウンター一二席、テーブル席八〇席のゆったりとした空間で、午前11時から夜12時までの営業。アルコールメニューが主体でスコッチウイスキー、国産ウイスキー九五〇円から。カクテルがドライマティーニ、サイドカー、シンガポールスリリングなど九〇〇円から。
オフィス棟には麺ハウス「伊万里」、和食レストラン「函館」、多目的レストラン「プランテーション」(各三階)と、シーフード大皿料理「海宴」(二階)の三店舗が出店しており、オフィスワーカーや来者が利用している。
三階出店の店舗は、いわば事業所内レストランといった雰囲気の店で、伊万里とプランテーションでランチタイム時(11時~午後3時)はチケット制のセルフサービスを導入し、土・日は休みという運営システムを採っている。函館は月曜日から土曜日までの営業で、日曜日のみの休みであるが、利用客の八、九割は施設内からの客といい、外来利用者は一、二割にとどまっている。
プランテーションは店舗面積二七五坪、客席数三七七席の大きさで、午前11時から午後10時までの営業であるが、通常のレストラン機能に加えて立食パーティーやビアパーティーなどグループ利用のコンベンションスペースとしての使い方も可能で、いわば多目的レストランとしての機能を発揮している。
この店舗利用者はオフィスからの利用を中心に、ホテルからの流れで立食パーティーの需要もあり、一日平均客数四〇〇人、平均日商八〇万円を上げている。
三階の「海宴」は魚介類の大皿料理を主体としたレストランで、テーブル席、座敷席(一〇部屋)合わせて一五〇席の規模をもつ大型店。中国料理スタイルに改め、グループ客集客に切り替えた。メニュー料理はコース料理として六〇〇〇~一万五〇〇〇円など、中心客層は三〇~四〇代の男女で、固定客の利用が六、七割。また企業接待も多く、独自の集客力を発揮している。