トップインタビュー:花月食品代表取締役副社長・鶴見嘉弘氏
‐‐すでに二〇〇店舗を超える「ラーメン花月」があるのに、いま、なぜあえてB*EATのような新業態を始めたのですか?
鶴見 過去の経験や実績に頼る時代は終わったと思うんです。ただ同じような店を増やしていくのではなく、新しい発想を取り入れ、常に進化させていかなければ、市場や顧客のニーズの変化に対応できません。B*EATを出そうと思ったとき、最初は商業施設に出店を考えていたのですが、坪単価から計算すると、どうしてもラーメン単体では採算が取れない。原価率が高いですからね。そこで、ダイニングバーにすれば、ドリンクとフードの売上げを増やすことで原価率を下げられると考えたのです。
‐‐ダイニングバーとラーメンの組み合わせは、かなり無理があるように思えますが……。
鶴見 発想の原点は博多の屋台ですよ。焼き鳥やおでんで酒を飲んだ後、ラーメンで締めるというスタイル。それをスタイリッシュにしたわけです。ロンドンやニューヨーク、ロスにはすでに、「ヌードルダイニング」や「ヌードルバー」があって、スノッブな連中が通っています。ロンドンの有名店「WAGAMAMA」も見てきましたよ。
‐‐客層、客単価は狙い通りですか?
鶴見 六本木というエリアは昼はオフィス街、夜は歓楽街という二つの顔をもっています。それを難しいという人もいますが、私は逆手にとって、「三毛作ができる」と言っているんです。すなわち、昼はサラリーマン、OLを中心としたランチ、アイドルタイムはカフェとデザート、夜はダイニングバーとして効率よく回転できるわけです。昼九〇〇円、夜二五〇〇円という想定客単価に近づいていますね。
‐‐ラーメンは話題の森住康二さんがプロデュースしたんですね。味も好評のようですし、もっとラーメンを前面に打ち出してはいかがですか。
鶴見 いまラーメンの売上げ比は五割です。売上げだけを考えれば、ラーメンをもっと打ち出せばいいのですが、ダイニングバーという業態の軸をぶらしたくありませんから、あくまでラーメンはフードの一つとしてとらえています。現に、ラーメンを食べないで帰られるお客さんも多いですし、外国人の貸切りパーティーが入ったりしています。
‐‐次は赤坂に出されるとか。
鶴見 TBS会館の前に、和食ダイニングとラーメンを融合させた店を出します。年収の高いアッパーなサラリーマン層を狙います。空間もデザイナーを起用し、モダンジャパニーズというコンセプトでスタイリッシュな内装にします。メニューはつけめんに比重を置き、「板そば」風に出す見せ方も考えています。酒も日本酒や焼酎を入れます。年内は赤坂に続き、渋谷にも出店をします。
‐‐社名も変えるそうですね。
鶴見 7月1日付で社名を「グロービート・ジャパン」に変えます。社屋も荻窪に移転します。グロービートはgrovalとbeとeatを掛け合わせた言葉で、世界と食を結び付け、常に動きのある会社にしたいという思いが入っています。
‐‐ジャパンと付けたのは?
鶴見 夢は海外進出。日本ラーメンを切り口に世界に出ていきたいですね。