地域ルポ ヤングの街「下北沢」 パスタ専門店に強いニーズ
駅の一日当たりの乗降数は、小田急が七万七〇〇〇人、京王帝都が六万三〇〇〇人の計一四万人で、両私鉄沿線でも比較的乗降数が多く、賑わいのある街となっている。
賑わいといえば、下北沢は駅の南口、北口、西口の三つの乗降口を中心にして街の拡がりをみせており、いわば典型的な駅前商店街としての性格がある。
しかし、駅前商店街の賑わいをみせているのは南口と北口で、西口は商店街としても道路(鎌倉通り)に沿った線としての拡がりにとどまっており、商業集積はまだこれからのエリアといえる。
南口、北口は下北沢の駅前商店街を形成する街の中心軸であるが、若者の街としての大きな賑わいをみせているのは南口である。南口は駅乗降口の正面から文字どおりに南方向に伸びており、このメインストリートが「サザンロード」として、乗降口から東側に約一〇〇mほど離れた側に「東通り」が、さらにその外側を「茶沢通り」が南北に位置するという形になっている。
商業集積はこれらの通りに沿って面的な拡がりをみせているのであるが、街としての中心ゾーンはサザンロード沿いと、東通りに抜ける「ピュア通り」など三本の横道沿いに拡がる部分で、サザンロードと東通りに挟まれる面に集約される。
もっとも通りといっても昔の農道、畔道を公道としているので、道路幅は車一台が通れるほどの狭さで、街の中心ゾーンといっても華やかさはない。いわば、山の手の“下町”といった風情の街並で、原宿の路地街や竹下通りに似た雰囲気にある。
南口商店街エリアは地番でいえば、「北沢一、二丁目」と「代沢一、二丁目」を中心ゾーンとしているが、その範囲は駅の乗降口を軸にすると、半径僅か一二〇~三〇m前後といったところで、極めて狭隘な面に集積している。
しかし、この狭隘な地域にスーパー(忠実屋)やブティックのほか、ファーストフードやパスタの店、居酒屋などヤング層にターゲットを合わせた飲食店舗が林立している。
ファーストフードといえば、南口エリアにはマクドナルドをはじめ、ロッテリア、モスバーガー、ファーストキッチン、ケンタッキーフライドチキン、ミスタードーナツ、天丼てんや、牛丼松屋などが点在しているが、若い女性にとくに飲食ニーズの強いスパゲティなどパスタ専門店も多く、独自の飲食マーケットを形成している。