高度成長する惣菜・デリ 地域小売店、大型チェーンとの差別化模索
大型スーパー、CVSの地域出店やディスカウントストア、カテゴリーキラー等の台頭によって、地域に密着した昔ながらの商店が年々消えていっている。その代表例として米屋、酒屋が挙げられよう。この両者の特徴は何といっても付けがきくことと配達である。しかし、この伝統ある業態特性も、核家族化や車社会・カード社会の振興等によって簡便性を失いつつある。さらに小売店側も人手不足から商品を売る以外のサービスを付加させる余裕が無くなってしまった。
《手づくり惣菜 をコンセプト》 いかに時代のニーズに対応するか、いかにお得意様を取り戻すかの課題に対し、家業として代々受け継がれてきた商売を鞍替えして、大手CVSやディスカウンターのチェーン店になるといった動きが多くみられる。しかし、こうした流れに敢然と立ち向かう商店主がいないわけではない。組織力のあるスーパーやCVS、ディスカウンターと“量的”な戦いをしても意味はない。が、“質的”な勝負であれば勝ち目はある。その戦略はやはり“手づくり的な商品”や“きめ細かな販売”といったハイタッチなものであろう。
このキーワードを見事に取り入れ成功している食品ミニスーパーがある。それが、今回紹介する「ナリタヤストアー」である。
「ナリタヤストアー」は大正8年創業で、その前身は魚屋であった。現在の社長の成田廣文氏は三代目。同氏が昭和48年に食品ミニスーパーに業態転換させた。その目的は食品スーパーのチェーン化ではなく、これまで引き継がれてきた“のれん”をいかに将来に繋げていくか。そのためにはどういう業態店になるべきかを考えた結果が、手づくり惣菜を売りとした食品ミニスーパーであった。
同店の立地は、東京・西巣鴨にある庚申塚商店街の一角。昔からの伝統的情緒を漂わせた保守的イメージを持つ街である。この商店街も例外ではなく、最近は業態転換する商店が相次いだ。ナリタヤストアーを中心に半径二〇〇㍍以内にCVS、スーパーなど合計的一〇店舗が軒を並べる激戦区となった。
こうした商圏で個店として生き残って行くのは至難の技である。同店の面積は売り場だけで僅か二〇坪前後しかない。取り扱い品目を増やすといっても限界がある。しかも食品スーパーの粗利益率はせいぜい一五%前後だ。グロサリーより付加価値が高く、日常的な食ニーズにマッチした業態、さらに競合チェーン店にはできない魅力づけがなければ、“のれん”を守り続けることはできない。
そこで着目したのが、「手づくり惣菜」というコンセプトだ。本格的スタートを切ったのが昭和55年頃。それから約一〇年が経った現在、一般グロサリーと惣菜の販売で年商二億五〇〇〇万円。うち惣菜類の売上高は約四〇%のウエート。売上的にはグロサリーしか扱っていなかった時代と大差ないが、粗利益率はケタ違いだ。グロサリーが一七%前後であるのに対し、惣菜は何と約四〇%。調理に人手を掛けても純利益は二倍前後にはなる。
同店の惣菜の品揃えは約一八〇種類。一日の平均販売個数は一〇〇〇~一二〇〇パック。メニューは日常の食卓にのぼるほとんどのおかずを網羅している。焼き物、揚げ物、煮物、和え物、蒸し物、弁当・米飯類などバラエティに富んだアイテムを用意している。これらが材料の下処理から、調和、調理に至るまで、すべて手づくりで商品化されている。特に、手づくり惣菜へのこだわりとして、原材料の鮮度がある。同店では原材料の九九%がその日に仕入れた生鮮品を使用している。青果物は近隣の豊島市場から、魚介類は築地市場から毎日仕入れる。
惣菜は、毎日食べても飽きないおいしさが必要だ。それは、原材料が持つ本来のおいしさと鮮度に起因している。さらにそれを生かす味付けが重要だ。この微妙な調和・調理は工業化し難い部分であり、競合チェーン店の弱点である。言い換えば、スケールアップを求めなければ、一般小売店の最大の武器は手づくりによる質の高い商品供給であるといえよう。同店の惣菜の場合、ロス率は何と一%未満である。夜九時近くになっても決して値引きはしない。材料からしっかりと仕込まれた惣菜はその日の夜になっても味や品質に大きな変化はないという自負があるからだそうだ。そして何よりタイムリーに温かい惣菜を提供するという基本姿勢があるため、商品ロス率がこれだけ低いのである。
《値引せず、売れ 残しもなく…》 同店の営業時間が朝一〇時から都電荒川線の終電までの夜十一時までというのにも驚かされる。一日の来店者数は約八〇〇名。その内訳は、十一時半頃から午後一時過ぎまでの昼食時が約二〇%、午後一時過ぎから夕方五時頃までが一〇%、夕方五時以降がピークタイムで七〇%。
この時間帯別の客の流れはほぼ一年通して変わらない。それだけ地域住民に定着した店であるわけだ。だからこそ、手づくり・できたての惣菜を値引きせず、売れ残ることもなく回転させられるのだ。













