うまいぞ!地の野菜(46)宮崎県現地ルポおもしろ野菜発見「日向かぼちゃ」

2002.11.04 262号 13面

日本で流通するカボチャの九割は西洋カボチャ。しかし、宮崎市生目(いきめ)地区特産の日向かぼちゃは、日本古来のカボチャとして今もかたくなにその味わい、色あい、形を守り、今日に至っていることで知られる。

明治期の栽培以来、かなりの紆余曲折を経てきたというその歴史を資料で探ってみる。

庭先栽培から大量栽培に踏み切ったのは明治40年。宮崎市大工町で油障子紙などを利用し、今でいう温室栽培風にカボチャ大縮緬種の早出しを行う。

大正7年には、一大産地、岡山新泊に取って代わるほどに。また一方で13年には千葉から黒皮種を導入し、現在の日向かぼちゃの基礎をつくる。

昭和2年、宮崎の黒皮かぼちゃを大阪市民にアピールしようと、当時としては画期的な飛行機を使っての大宣伝をし、話題を呼んだ。知名度を上げるに従い、宮崎市内の栽培者は増え、昭和38年には約一〇〇〇人にふくれ上がった。

また鉄道も整備され、「一日に何回も出荷されている光景が、いまだ目に焼き付いています」という長友和寛さん(50)。現在、黒皮かぼちゃ生産部会長を務め、ハウス内立体栽培法というこの地区独得の栽培法を考案したアイデアマンでもある。

従来の常識であった露地にツルをはわせるものから、支柱を立ててツルをのぼらせ、ぶら下げるのが立体栽培法。

この方法に切り替えたことで、カボチャにまんべんなく陽が当たり、熟れるのも早い。地にはわせないので形も良いという多大な効果を上げた。

長友さんの栽培法は、9月15~20日に播種、10月15日ごろ定植。11月5日ごろ開花、12月10日には冬至用として一番果が出荷される。収穫は翌年の6月ごろまで続く。

一個が収穫されると次の花に受粉させる。一つずつ丹念におこない、この道三〇年の長友さんも「何年やっても気が抜けないのが受粉作業。キチンと手を加えないとしっかりしたカボチャは望めません」。

結実後、約三五日間じっくり熟成させるため、一苗で五~六個の収穫が限度。

黒皮かぼちゃ系の日向かぼちゃは、爪が立たないほど硬い皮をもち、煮崩れしにくいためじっくり煮上げる。その上品な甘さは、日本料理に欠かせない食材として人気を得ている。

栄養価は、カロチンを豊富に含み、がんなどを予防する抗酸化作用や糖尿病の改善に効果ありとされる。またビタミンC・B1・B2も多く、ミネラル群と協力し新陳代謝を活発化するなどの効果が得られる。

ただ難は、「日向かぼちゃの特徴で、皮の表面が白っぽくなるのですが、一般消費者からは農薬のせいではないかと問い合わせがあります。もちろん料理人さんからの文句はありませんが」と笑うのは原田善都宮崎県経済連広域集配送センター所長。

「競争が激化する中、生き残るには確かな品質を保証するブランドでいくしかありません。差別化はこれだけです」と言葉をかみしめる。

現在、海外から大量のカボチャが流入する。対抗策として日本のカボチャ産地は、北海道が夏場、宮崎・尾鈴地区が11月末、宮崎・生目地区が12~6月と相互協定を結び、出荷を途切れさせないようリレー販売させている。

■生産者=宮崎中央農協黒皮かぼちゃ生産部会(宮崎市花ヶ島町大原二三五三、電話0985・24・4332、FAX0985・24・0834)

■販売者=宮崎中央農協宮崎支店(宮崎市花ヶ島町大原二三五三、電話0985・24・4332、FAX0985・24・0834)

■価格=五キログラム箱三〇〇〇~四〇〇〇円。宅配可。

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