めざすは一流MISS料理人:タケハーナオーナーシェフ・竹花いち子さん

2002.12.02 263号 16面

東京・世田谷の閑静な住宅地にある「タケハーナ」は、創作料理が人気の店だ。店のオーナーシェフ・竹花いち子さんの前職はコピーライター。

「コピーライターとして最後の仕事が、自分の店のネーミングでしたね」と笑顔で話す。竹花という苗字をエキゾチックに「TAKEH~ANA(タケハーナ)」と書く店名は、読む人に不思議なインパクトを与える。

「コピーライターの仕事の評価は、コピーを書いた商品が売れたかどうかだけです。だから売るためには自分の本意でないことでも書かなければならないんです。一五年やってみて、どこか自分に無理があることに気がついたんですね」

子供のころは、毎月家に来る料理雑誌が楽しみだった。

「料理方法よりも、料理の美しい色彩や盛り付けに魅了されていました。たまにまねして作ると褒められたりするので、自分でも料理は得意だと思っていました」

それで料理の道に進むことに決めた。

「料理の仕事はお客さんの反応を自分の目で確かめられますし、時には面とむかって褒めてもらえる。こんな楽しい仕事はほかにはありませんね」と満足そうな様子だ。

開業一〇年目にはいる店の人気の秘密は、竹花さんの独創的な創作料理にある。

「和洋中、エスニックの枠に当てはまらない。こういう材料でこんな料理ができるのかと驚かれる料理を考えるのが好きなんですね」

今でも料理の発想には視覚を大切にしている。

「仕入れは、旅行先で市場を見て歩くのと同じ感覚です。自分の知らなかった食材を見つけて、それからメニューを考えることも多いんですよ」

メニューの総数は三三、うち半分が定番で半分が週替わりになっている。なかには春菊が嫌いな人でも食べられると評判の「サバミリン干しサラダ」(一一〇〇円)や、「こんにゃくのチーズフリット」(八〇〇円)などロングセラーになっているメニューも多い。

仕事の時には必ずかぶるトレードマークの帽子をかぶって厨房で忙しく働く竹花さんの姿には、気負いのないスマートさが感じられる。

◆「タケハーナ」(東京都世田谷区代沢三‐一二‐二〇、ビラ・アズマ一階、電話03・3410・1739)

◆プロフィル

竹花いち子さん たけはな・いちこ=1955年神奈川県川崎市生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。家族は両親と兄。趣味は絵画鑑賞、旅行、スペイン語学習。将来は世界各地の土着の料理を研究するのが夢。

◆料理人を目指す女性の後輩へ

好きならやってみなさい。仕事は就いてみないと自分が本当にその仕事が好きかどうかわかりません。それにたとえ好きでも、自分の体力や健康に適しているかどうかもわからない。まず始めてみて、やりながらいろいろ考えることが大切だと思いますね。

◆いちおし食材 サバみりん干し

サバは外国産のものが多いのですが、このサバは、静岡県の伊東近海で捕れたものです。鹿児島県の洗双糖と醤油だけを使用し、添加物を使っていないので、日本のサバ本来の味が生きています。

・(有)島源商店(静岡県伊東市松原本町四‐八、電話0557・37・2968)

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