創意工夫の販売方法・中食編(12)圧倒的プライス、惣菜店「かねふじ大島店」
地域商店街に立地する「かねふじ」チェーン(都内一二店舗)は、いま中食業界でもっとも注目されている店舗だ。一〇m先からでも各商品の価格が分かるダイナミックな看板表示と、圧倒的お値打ち価格で、道行く人々の目を釘付けにしている。
◆「かねふじ大島店」=東京都江東区大島6‐22‐5、電話03・3636・1461
高効率を徹底した商品戦略、オペレーションから生み出される究極の価格帯は、弁当二五〇円、コロッケ二〇円、からあげ一〇〇g一〇〇円、焼き鳥五〇円(雨天時四〇円)。「子供から老人までが気軽に買えるプライス」をモットーに価格レンジを設定。“お値打ち”という最大のサービスを提供している。
この日常セールスの追求は、まさに「気軽さ」「手軽さ」「買いやすさ」という面において、地域密着型の代表といえる店舗である。
「かねふじ」が中食業界で注目されている要因は、この価格設定と、創業者・遠藤恭二社長が築き上げた独立開業制度にある。これは、直営店で修業を積んだスタッフを入社後約二~三年で店長=社長として独立開業させるもの。独立資金は本部が全額負担するシステムだ。独立後は本人の努力・才覚次第というわけである。短期間で月収約三〇〇万円に達するケースもあるという。
独立開業制度は「自ら構築した仕組みをやる気ある人材に分け与えたい」という遠藤社長の思いが形になったもの。この制度にあこがれて、かねふじの門をたたく起業志望の若者は後を絶たない。
店舗の内装とシステムは極めてシンプル。まったく無駄がない。購買者から見える作業台と、毎日油を交換する大型フライヤー、大型冷蔵庫、いくつかの棚がある以外は最小限の設備で、「大量生産」「大量販売」という安さのゆえんを購買者にも知らしめている。
常に時代の先を考え、新しいサービスを模索し続ける「かねふじ」。今日よりも明日、明日よりも明後日お客様のニーズを追求し、現状に甘んじない店舗だから時代の変化や市場の移り変わりに柔軟に対応し、いつでも地域のお客様に愛され続ける店舗でいられる。
「努力をしない店は生き残れない」が遠藤社長の口癖。真にその通りであることを、店長はじめ商品や店が物語っている。
写真の「かねふじ大島店」の中島店長も独立店舗として一店舗を任され、日々活力に満ちている。「とにかく各店が自店の立地特性や顧客ニーズを分析し、その店にあった商品戦略を展開している」という。
たとえば、写真の二五〇円弁当も、当初一日平均約四〇〇個販売していたが、出せば出すだけ売れてしまうからこそ、闇雲に売り続けるのではなく、日々の個数を考え調整しながら販売する形に切り替えた。
「かねふじ」の躍進は著しい。現在の一二店舗を足場に二〇店舗、三〇店舗と確実に勢力を拡大する見込みだ。
((株)サンエーシステム企画開発室長・高橋理枝)