話題の企業・トップインタビュー:ビルディ代表取締役社長・菅谷昌吾氏

2003.02.03 265号 5面

すかいらーくグループの一企業として平成6年に設立した(株)ビルディは、現在首都圏を中心に七七店舗を展開。不況をしり目に二けた成長を続けている注目の企業だ。「街中のデーリーテーブルレストラン」を標ぼうし、駅前立地で「高品質・低価格・フレンドリーなサービス」を提供。これまで駅前にありそうでなかった、女性がひとりでも入れる日常レストランとして人気を集めている。一〇〇店舗達成を目前に控え、昨年末にオリエンタルダイナー「アジワン」の一号店もオープンするなど、飛躍の年を迎えている。菅谷昌吾代表取締役社長に聞いた。

‐‐外食の市場動向をどう見ていますか。

菅谷 非常に厳しいですね。品質、サービス、価格とも、より複合的でレベルの高いものが望まれている。とくに商品そのものの価値。それを企業が追求しない限り、お客様を失うでしょう。

また、食の外部依存が高まり外食中食市場は拡大しているが、それ以上にオーバーストアという問題がある。これが深刻だ。

‐‐その中でビルディが好調に推移している要因は何でしょうか。

菅谷 決して楽に伸びているわけではありません。基本は「おいしく、安くて、清潔」。そしてお客様の顔を覚えるフレンドリーなサービスです。人は一年間でおよそ一〇〇〇回食事をします。いつもグルメばかりではない、おいしくて気軽に取れるものを食べていることが一番多い。ところが駅前は、立地コストが高いので、企業は別の付加価値をつけて高い価格で売ってきた。

でもビルディは、「良いものをリーズナブルに日常食として提供したい」。だから原価率が高くても安く提供する努力をしてきました。中には原価率が五割を超えるものもあります。サーロインステーキを四九〇円で提供していたこともあります。原価で売価を決めるのではなく、デーリーテーブルレストランとして、ビルディなら食べたいものが食べやすい価格である。常にそうありたいと実践してきました。

また、良いと思えばすぐにでも商品化します。差込みメニューは、提供期間が二週間でも、お客様に旬のものを食べていただきたいから採用する。そうした瞬発力も特徴といえるでしょう。

‐‐女性がひとりでも入りやすいことも好評ですね。

菅谷 街中で入れる店がなく、困っている女性に利用してもらいたいと考えました。だから客層の六五%が女性です。メニューもオールマイティーに対応しています。みんなでワイワイ飲むのなら居酒屋がある。でもひとりでも軽く一杯飲みたい。また女性は少食かというとそうでもない。白飯よりピラフやリゾットの方が好まれるなど、そうした事実は現場で見えてきます。

お客様の声を聞いて、望んでいるものを提供し続ける。とくに郊外に比べて街中は変化が激しい。私どもは常に変化し続けていくことが課題です。難しい業態ですが、それに挑戦することが喜びです。

‐‐昨年暮れ、オリエンタルダイナーアジワンを出店しましたが。

菅谷 西葛西のビルディ四号店をリニューアルしアジワンをオープンしました。気軽な食事だけではなく、時には仲間や家族と豊かな食卓を囲みたい。それはどんな料理かというとアジアにシフトしてきた。私も行きましたが、おいしくて感動した。アジアの各国料理でお客様に食べていただきたいものをピックアップして、あの雰囲気とともに提供したのがアジワンです。

客単価は昼八〇〇円、夜二六〇〇円、アルコール比率は三割と予想通り。「専門店に比べて安い」とお客様からは好評です。でもビルディ以上に原価をかけているものも多いですね。ソフトシェルクラブ丸ごと揚げ(二匹八〇〇円)、北京ダック(九〇〇円)は、丸ごとではありませんが、みな驚いています。

‐‐今後の出店計画は。

菅谷 お客様の反応を見ながら検討します。立地はビルディと同じ駅前。商品の開発もサービスもまだ始まったばかりで、私はまだ満足していません。ニーズは、若い方から年配の方まで幅広くある。旅行の思い出を語っていただき、料理へのアドバイスをいただいたこともあります。会話から、次のきっかけが生まれることもあるでしょう。ビルディにしてもアジワンにしても自分が何をやらなければいけないか、冷静に判断できるのが現場です。理想論や雲の上の話をしている暇はありません。常に現場に危機感を持っていることが大切だと思っています。

◆横顔

すがや・しょうご/昭和30年東京都生まれ。53年大学卒業後、(株)すかいらーく入社。海外事業、店舗システム開発、商品開発、フロジャポン取締役などを経て、平成6年(株)ビルディの常務取締役に就任、8年代表取締役に就任し現在に至る。

◆店舗紹介

(株)ビルディ(本社所在地=東京都武蔵野市境南町二‐一〇‐二一、新倉ビル、電話0422・34・5111)平成6年設立。街中のデーリーテーブルレストランとして世田谷区千歳船橋に「ビルディ」一号店をオープン。首都圏を中心に駅前立地で七七店舗を展開。ここ三年の売上高は、三四億円、四三億円、五三億円と二けた成長。昨年暮、新業態のオリエンタルダイナー「アジワン」(東京都江戸川区西葛西六‐一〇‐一二、MMビル2F、電話03・5674・7057、営業時間=午前11時~翌午前1時)を西葛西にオープン。新鮮な魚介類を使った高品質なアジア料理をリーズナブルに提供し大好評だ。

◆「アジワン」のヒットメニュー ベトナム揚げ春巻き(1本・250円)

ネットライスペーパーでエビ、イカ、パパイヤ、ヌクマムなどの具材を巻いた揚げ春巻き。油ぎれのよいサクサクの食感が大好評。ランチのサイドメニュー、アルコールのおつまみに最適で、これ目当ての来店客も多い。生春巻きと合わせ、看板メニューの二本柱だ。

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