ピカイチキッチン(30)食品衛生法の考察
昨年は食品にまつわる事件や事故が相次いだが、食品の安全性に関する消費者の目はますます厳しくなると推察される。その矛先もフードサービス業界に及ぶことは時間の問題だろう。こうした状況下、国内の規制の問題点は何かを考えてみたい。本来食品の安全性を守るのは各企業自身、従業員一人ひとりの問題であり、行政に頼るやり方には限界がある。
●食品衛生法の変革
国内では「病原性大腸菌O157事件」をきっかけにして旧厚生省から「大量給食施設衛生管理マニアル」や「衛生管理チェックリスト」などが公布され、体裁上は大きな変化といえる。が、いずれも内容があいまいで抽象的な表現であり、その効果に疑問を抱かざるを得ない。
特に「衛生的…」という表記が目立つが、「衛生的」の定義がなく分かりにくい。欧米ではこのような基準は具体的な数値基準を示し指導しているばかりでなく、刑事罰を伴う厳しい内容となっている。
こうした規制の違いはデジタル的管理手法とアナログ的管理手法の違いではないだろうか。ちなみに日本はアナログの代表といえる。
●強制力の乏しい規制
食品衛生法や学校給食法の多くはあくまで指導基準であるが、それは運営者への協力依頼的意味合いが強く、強制力を伴わないため罰則規定もない。換言すれば当局の指導を受ける形式のみを整えれば営業は許可となる。が、一旦事故が起きればすべて「あなたが悪い」となる。
このような規制では、衛生的厨房施設の実現を行政に期待すること自体困難であろう。
●安全性に対する規制
食品衛生法の原点は、「菌を付けない、持ち込まない」的発想であるのに対し、HACCPやGMPは「菌を増やさない」ことを中心に指導している点、前記の発想は極めて非現実的である。
また、食品衛生法の内容は食中毒の予防、食品添加物の規制、包装容器の規制および営業許可を中心としているが、危険防止上、食品の品質管理に着眼した温度や時間管理の規定がほとんど見られない点大きな課題である。
●規制のあり方
国内で事故防止の対策は原因食品の追求のみに集中しているように思われるが、換言すれば原因が判明しないと事故防止はできないのであろうか。食中毒事故はどうしたら起きるかあらかじめ既存施設とスタッフの衛生レベルを考慮した上で、その可能性を分析しておくことが重要である。
その上で事前に対応策を作成しシミュレーションすることが効果的であろう。従って、法規制見直しのポイントは、このような事前プログラムの作成を義務づけるべきであるが、あくまで一般衛生管理要件をまず整備してはじめて効果が発揮されることを忘れてはならない。
((株)サニテック・本山忠広)