宅配ビジネス最前線:高齢者向け宅配事業のいま=タイヘイ
「今を遡ること三〇〇有余年、初代太田平左衛門が酒の製造販売を業としたのがその起源といわれています」と業務部開発課係長村田達也氏は語る。
対外的には明治13年に酒造業から味噌・醤油の醸造へと業種転換した時点を創業としている。資本金一〇億円という巨大企業ながら、いまだ非上場企業であるがゆえに公開される情報は決して多くはない。
会社案内を開くと白衣のような作業着をまとった女性が、その身の丈の二倍はあるかと思われる大樽の前でたたずんでいる。ベールに包まれた同社のルーツをひも解くかぎは、案外この大樽にあるのかも知れない。
有名醤油銘柄として成長し昭和26年に「太平醸造工業(株)」と改名、法人組織となってからは日本の工業化の進展とともに社員食堂などで販路拡張を図り、昭和37年に業務用の食材供給システム「クッキング・デポ」を開発し成功した。
昭和43年に社名を「タイヘイ(株)」と改称、47年以降は業務用から家庭用の献立材料宅配事業を試み「ファミリーセット」の開発をスタートし現在に至っている。
巨大な醤油樽と同様に老舗の伝統文化は脈々と醸成され、時代の温度変化を敏感に察知し市場ニーズにこたえ柔軟な業種変換、業態開発を行ってきた。これがタイヘイの経営の歴史である。
長い社歴を有するがゆえ、タイヘイにはさまざまな関連会社や商品・サービスが存在し、ユニークなサービスを開発する原動力となっている。そして、「豊かな暮らし」を実現するための事業の下支えとなっている。
同社の組織は、食材事業部、食品事業部、フレッシュデリカ事業部、信販事業部と四つの事業部で構成され、中核になっているのが宅配商品であるタイヘイファミリーセットを取扱う食材事業部である。
主力商品であるファミリーセットは、治療食、介護食、健康食、一般食と大きく四つに分かれる。
構成比としては、やはり一般食が五〇%以上を占めているが、人気があるのは治療食に位置されるヘルシー御膳(構成比三〇%)である。
ヘルシー御膳は、「家族の食事とは別に、糖尿病のお父さんの食事だけ作るのは大変」という主婦の声にこたえて糖尿病などさまざまな食事制限を強いられる人々の食事として昭和60年に開発されたが、一食約二〇〇カロリーという低カロリー、塩分二g、野菜もシッカリとれるということで、近年ではダイエット志向や健康志向の消費者を含め幅広く支持されている。
治療食にはこのほかに、タンパク質や塩分を制限し、腎臓に気をつかう食事というスマイル御膳もある。
また、平成13年からは治療食を推し進めた形で病院の先生からの密接なアドバイスのもと、そしゃく障害者のための嚥下食(刻んだ軟らかい料理)を含め、特別用途食品の認定を受けた介護食メニュー(はつらつ御膳)を多数開発している。
タイヘイは既に家庭用宅配食材のチャネルを全国(北海道から九州まで一一ヵ所の地区本部、二〇〇ヵ所の出張所)に構築し、有数のネットワークをそろえて「豊かな暮らし」の実現に力を注いでいる。
例年新聞の折込広告やTVのイメージ広告を展開していた同社であるが、平成14年はあまり実施していない。それでもさまざまな自治体(三〇以上)の給食サービスとの提携や、医師からの紹介などを通じ外食産業不振の中で売上げは堅調だった。
また、過去の抱負なデータやアンケート結果を踏まえバリエーション豊かなメニューを七~八週間サイクルで開発しているが、近年の開発方針として治療食や介護食の開発に重点を置いてきた結果、顧客層が以前の三〇~四〇歳代ではなく、五〇歳後半から六〇~八〇歳代にしてきたという。今後は、家族の方を中心に三〇~四〇歳代の支持も増加するような開発を行っていくという。
◆企業名=タイヘイ(株)/ストアブランド=タイヘイ/本社所在地=千葉県八日市場市イ二六一四/代表取締役=折原秀則/創業=明治13年2月/資本金=一〇億円/従業員数=二四三三人