注目!ココが光る技あり店(9)FC加盟店舗編「クレープハウス ユニ」

2003.06.02 269号 8面

平成7年スターバックスコーヒーが日本に進出して以来、カフェ文化はすっかりわが国に定着した。それとともに脚光を浴びているのが、さまざまなパティスリーである。そのパイオニアともいえるのが、昭和53年から欧風ファストフードを展開するクレープハウス・ユニであろう。もともとファッションの都フランスの郷土料理であるクレープを日本に普及させたのはこのFCである。今回はイオン成田ショッピングセンター内にあるクレープハウス・ユニのFC店を取材した。経営するのは、千葉県印旛郡で金物店を営む(有)勝田金物店の二代目、勝田義幸氏である。両極端とも思える異業種からのチャレンジで奮闘する勝田氏に、異業種参入の技を伺った。

■FC加盟と独立の動機

平成11年のフランチャイズショー、そこで(有)勝田金物店の勝田清治社長(勝田義幸店長の父)は、クレープハウス・ユニと運命的な出合いをする。

千葉県は成田空港のある街であり、そして東京のベッドタウンとして発展してきた。日本の高度成長を象徴するようなエリアである。しかし、大店法の規制緩和などに伴い、広い土地と増加を続ける人口を目当てに、さまざまな新業態店が今なお進出している。

その典型がジョイフル本田や、ドイトに代表されるホームセンターである。そのような新業態の脅威に、老舗の金物店は新たな成長の手段としてFC加盟による異業態進出を考えた。数あるFCの中で、勝田清治社長がクレープハウス・ユニにひかれた大きな理由は、取扱う商品によっては八〇%に達するという高い利益率にあった。

現在、クレープ店を一手に任されている勝田義幸氏(37)は、専門学校を卒業後、横浜のドイト(ホームセンター)で三年半修業を積み家業の金物店を継いでいた。ご本人はクレープ店を経営することになるとは思いもしなかったようである。

しかし、平成11年11月に一号店を成田市のユアエルムSCにオープン、次いでイオン成田ショッピングセンター店を四ヵ月後の二〇〇〇年3月にオープンさせた。

■店舗の運営手法について

勝田義幸店長は、朝8時から閉店時刻の夜10時まで店を切り盛りしている。

「父は人に任せて運営する予定だったそうです。しかし、こういった郊外立地の飲食店は、平日の売上げが三万円で土日が三〇万円と繁忙の差がとても大きく、人任せではうまく利益を稼げません。僕が店長をやるようになりました」と勝田店長は当時を語る。

残念ながら一号店のユアエルムは現在、勝田金物店の手から離れ、この短い期間に多店舗化の失敗を経験することになってしまった。それを教訓にイオン成田ショッピングセンター店は順調に売上げを伸ばしている。

イオン成田SCは二〇〇二年3月にシネマコンプレックスも隣接され、魅力ある商業集積として集客力が増えている。その集客力に引かれ、近隣にはさまざまな外食レストランも、どんどん新規オープンする。消費者は次から次へと開店する新しい店へ流れるが、中途半端な運営体制の店へは二度と足を運ばない。そんなFC店は情け容赦なく撤退となる。

勝田義幸店長も、そのような現状をこの二年間でいろいろと見てきた。逆に生き残ったところには集客力アップというご褒美がもらえる。つまりここでは、客の期待を裏切らないで生き残ることが最大のテーマと悟り、一号店の撤退という苦い経験をバネに、他人任せにしない経営の基盤を築いていった。

■他のFCとはココが違う

ファストフード最前線ともいえるこのエリアで、当店が勝ち残っている秘けつは店長の生まじめさであろう。もちろん体力的にかなりハードなはずだが、そこは家族で支えあっている。

例えば、この日も「試食してみて下さい」と、サラダクリームチーズクレープ(三五〇円)を筆者に作ってくれたのは店長の母親だ。異業種への参入という偉業は、家族の強い絆と協力、そして励ましがあってこそ成し遂げられるのであろう。

この周辺は成田空港で約三万人の雇用を生み、大型店舗も多いため、アルバイトの採用には大変苦労するという。求人広告を出しても問い合わせが一件だけということもあるそうだ。そのような状況で、家族が臨機応変に時間をやりくりして運営することが重要になる。家族の支えがあってクレープハウス・ユニは運営されているのである。

そして「もともと手先は器用なほうです」という店長が、一八〇度Cの高温で焼き上げるパテは、確かにしっとりしておいしい。「成田で一番クレープを売っているのはウチでしょう」というこの店の月平均売上高は二五〇万~三〇〇万円である。特に平成13年度は対前年比売上げ一〇九%の成長率を達成した。

■将来の目標・ビジョン

クレープは、カステラなどと同じで焼きたてより少し寝かせた方がおいしい。しかし、縁日の廉価なクレープしか食べたことがないひとには、焼きたてじゃなければまずいという先入観がある。この店のように作り置きしてあるクレープに抵抗を示す人も多い。客の意識を変えてもらうことは重要だ。

「このエリアのひとりでも多くの方に本格的なクレープの味をわかってもらいたい」と勝田義幸店長は語る。今後は、ランチとして利用できるクレープメニューや、贈答品などで売上げの拡大を目指すという。

((有)マネジメントプロセス・アソシエイトスタッフ・コンサルタント・東山世司子)

◆FC本部担当者からのコメント

先日、アメリカのお客様が当店へ立ち寄られ、お召し上がりになったクレープが大変おいしいのでアメリカへ出店したいと言われました。そのお客様は、お土産にクレープを買って帰国されたそうです。勝田義幸店長のマニュアルに基づいたオペレーションを確実に実行するまじめな姿勢は、イオン成田ショッピングセンターからも高い評価を受けています。

今後、この地域は都心に比べてクレープを知らない方、聞いたことはあるが食べたことのない方たちが多いと思うので、そういった方々へのPRやブランチメニュー、ギフトセットなどを活用して売上げアップを目指してほしいと思います。((株)ユニ・ピーアール スーパーバイザー佐々木氏)

◆筆者からのコメント

以前、この店のクレープを「おいしい!」とおっしゃって五時間も滞在しクレープを五つ召し上がった高齢のご夫婦がいらした。最後にはお土産として一二個を買って帰ったという逸話があるそうだ。確かに筆者が試食させていただいたクレープも、経験したことがないほどのおいしさだった。

しかし、筆者は何故か今までこのクレープを食べる機会がなかった。歴史のあるFCにもかかわらずに。今後は、加盟店の積極的な拡大を目指して、家業から企業へと加盟店の変革を促し、組織的なマーケティングにより、そのおいしさをいかにアピールできるのかが今後の課題といえよう。

クレープは金物と違って、在庫コストも低く商品ロスもほとんど発生しない。そのうえ利益率も高いので、客数と客単価さえ上がれば成功の可能性は高い。

●店舗データ

店名=クレープハウス・ユニ イオン成田ショッピングセンター店/所在地=千葉県成田市土屋山崎六八〇、イオン成田ショッピングセンター二階、電話0476・23・8263/店長名=勝田義幸/店舗面積=三〇坪/平均客単価=六四三円/平均月商=二〇〇万~三〇〇万円/企業名=(有)勝田金物店/所在地=千葉県印旛郡栄町安食三七四一/代表取締役=勝田清治(かつたせいじ)

●チェーンデータ

企業名=(株)ユニ・ピーアール/所在地=東京都中央区築地一‐五‐八、電話03・3543・2391/店舗数=一〇三店(直営八店FC九五店)

●モデル収支(二〇~三〇坪タイプ)

売上高四八四万四〇〇〇円、原価率一五二万五〇〇〇円、粗利益率六八・五~七六%、水道光熱費二一万円、人件費九八万円(アルバイトスタッフ人件費)、一般営業費一〇五万九〇〇〇円、ロイヤルティ(売上げの)五%

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