パスタ特集:WDI「カプリチョーザ」 元祖大皿料理、パスタ人気を一身に
カプリチョーザは、南イタリアで見かけるトラットリア(大衆食堂のイメージ)をコンセプトに、気軽で陽気なカジュアルイタリアンとして、昭和60年、一号店を東京・渋谷にオープンした。
手掛けるのは(株)WDI。「We do it」を経営理念に、海外の食文化を国内外に紹介してきた企業である。中でもカプリチョーザは同社の中軸業態といえる。
カプリチョーザは、イタリア国立調理学校を首席で卒業し、大阪万博のイタリア館カフェの料理長を務めた本多征昭氏が、昭和52年、東京・下北沢で独立開業したことに始まる。ボリュームある本場イタリア料理を、気軽に取り分けて楽しめる店として繁盛した。
昭和60年にWDIがビジネスパートナーとして参画し、FCで多店舗化を図った。以後、若い女性を中心に爆発的な人気を獲得。「行列のできるイタメシ屋」としてカジュアルイタリアンの火付け役となった。
現在、日本全国、ハワイ、グアム、サイパンに一五〇店舗(直営五五店、FC九五店)を展開し、年間一二〇〇万人の集客を誇る。
日本でのイタリア料理はパスタなしに語れない。本来、メーン料理前の一皿(プリモフィアット)にしかすぎないパスタだが、日本では、リストランテでもパスタだけを注文する人が少なくない。
そんなパスタ人気を一身に引き受けているのがカプリチョーザだ。カプリチョーザでは、客の九五%がパスタをオーダーし、パスタの売上構成比は六〇~七〇%にも達する。
今では珍しくない大皿料理も原点はカプリチョーザだ。三〇〇gの乾麺を投じるダブルサイズのパスタはここの看板メニュー。現在は一人分のポーションにも対応し、ボリュームを半分に抑えたレギュラーサイズ(一五〇g)も用意している。
だが人気の秘密は、なんといっても手作り志向の本格味である。パスタはすべて乾麺を使用。最上級プレミア麺のモリサナをツーオーダーでゆで上げる。モリサナの特徴は、表面がツルツルしているのでソースが絡みすぎず、濃いソースでもその味を存分に引き出してくれるということにある。
結果、原価率は二五~三〇%にも達する。この高原価率は平均客単価一二〇〇円という低価格にも一因がある。しかしソースが決め手というカプリチョーザでは、モリサナ以外は考えられないという。
パスタソースのセールスポイントは、こだわりのトマトソースだ。
トマトはイタリアの指定農園で作り、カプリチョーザ専用ラインで加熱加工。糖度や酸度など一四項目の検査を欠かさず行っている。
野菜は減農薬・有機栽培ものを使用。また、品質と安全性にこだわる有志生産者と提携し、おいしく安全な食材の供給に努めている。殻付きアサリは浜ごと産直契約し、安定した供給を確保している。
接客サービスの基本テーマは、楽しく過ごせる場を提供すること。「お客がうれしいのは皆がうれしい」。このテーマに沿って、誕生日の各種サービス、イタリア年にちなんだメニュー人気コンテスト、イタリアの四大都市をテーマにしたコースメニュー「イタリア四都物語」などを展開している。
今後の展開だが、あえて目標出店店舗数は掲げないという。基本的には既存FCによる多店舗化を支援し、新規FC加盟は確実性を重視するという。新規FC加盟のハードルは高い。
イタリアンの先導役として、ほかの外食企業とは一線を画すカテゴリーキラーを目指すという。
◆カプリチョーザいちおし食材 モリサナのスパゲティ
イタリア国内のパスタランクのうちの最上位「プレミア」ランクのひとつ。パスタのコシを左右するタンパク質(グルテン)の含有量が多く、厳選Aグレードのデュラム小麦を原料とする。
パスタ工場の隣に自社製粉工場を設置し、常に製粉したての原料で加工生産しているという。低温長時間乾燥法によりコシだけでなく小麦本来の味と香りが生きている。
◆問い合わせ=石光商事(株)(電話03・3775・1432)
◆会社概要
企業名=(株)WDI/本社所在地=東京都港区六本木五‐五‐一、ロアビル八~九階 /代表取締役社長=清水謙/設立=昭和44年4月/資本金=一億九五一六万円/従業員数=四三一人/店舗数=一五〇店(カプリチョーザのみ)