創意工夫の販売方法・中食編(13)惣菜・米飯など多角経営を推進「知久屋」
「二一世紀の食と健康をプロデュースする」をモットーに商品の完全健康宣言をしている(株)知久の代表取締役社長・知久利克氏は力説する。「食は命の源なりという言葉があります。私たちはその言葉どおり食を通じて健康を追求する会社です」と。
静岡県内に九店の路面店と三三店のスーパー・量販店内店、二店の介護施設内店の惣菜店を構える同社であるが、この会社の商品づくりの際の「完全無添加」への徹底ぶりは、昨今の健康ブームにのってここ数年前から始めたところと違い、創業の昭和32年以来、素材・調理方法へのこだわりぶりをメニュー開発にもいかんなく発揮している。そのこだわり惣菜展開例は写真でご確認いただきたい。
飲食業界では今やどこでも聞かれる「素材にこだわって」という言葉であるが定番商品から、季節・スポット商品に至るまで、これだけすべての商品を入念に仕上げているテークアウトの店は、ほかでは類を見ない。
また、弁当・惣菜業を営むものにとって避けては通れない腐敗防止=防腐剤入りという概念。かまぼこや既製品の卵焼きなども一切使用しないという商品構成をとりながら、なんと約六〇〇アイテムものメニューを商品化し、購買者に飽きることなく買いつづけていただくための改廃の工夫、手間も惜しまない。これが真に人に・地球に優しい惣菜店といえよう。
知久屋の入口から店内に入るとどの店舗でもまず目に付くのが、使用素材の説明ポップである。どこの農家のだれが育てた素材を使用しているかなど。また、調味料などに至っては生活者の健康を配慮し、本当に体が喜ぶ商品は購入さえできるようになっている。
これを常にし続けてゆくということは、簡単に見えて非常に大変な時間と労力を要する。
しかし、このようなことが当たり前のように続けられる仕組みができているこの知久屋の仕組みには、いつも感心させられ、そのたびに多くのことを学ばされる。
多くの繁盛店を取材させていただいているなかで、この知久屋に最も驚かされたのは「地域への密着度の高さ」であるが、これを維持し続けてきた要素として次の点が挙げられるであろう。
(1)地域住民との密接なコミュニケーション=メールや電話での客の声に迅速、かつ誠心誠意対応。
(2)地域住民に愛される商品作り=地域になじんだその地域ならではの新鮮な素材をふんだんに使用し、それを和・洋・中・折衷その他あらゆる調理方法で商品化。
(3)決して地域住民を裏切らない明確な方針設定=引越しされる客の残念がる声に「近くに出店できるよう努力します」という対応を全社員に徹底。
静岡県内にはこの知久屋のほかにも惣菜チェーン店がいくつか点在しているが、これだけ客に愛され、かつ客との距離の近い惣菜店を見つけるのは難しいのではないだろうか。「慣れ親しんだ定番の中に新しさ・温かさ・優しさを発見できる店」それが知久屋なのである。
((株)サンエーシステム企画開発長・高橋理枝)
◆会社紹介
(株)知久/本社所在地=静岡県浜松市桜台一‐二‐一、電話053・437・7555/設立=昭和32年/資本金=六〇〇〇万円/代表取締役社長=知久利克/従業員数=五〇四人/売上高=三八億円(平成14年3月期)/事業内容=惣菜類・米飯類の製造及び販売、レストラン経営、介護施設での食事事業/主要取引先=(株)主婦の店、(株)富士屋、たつみストアー(株)、(株)スーパーオカノ、(株)遠鉄百貨店、花平ケアセンター、ほか