注目!ココが光る技あり店(11)FC加盟店舗編「函館朝市いくら屋」赤坂見附店

2003.11.03 277号 23面

東京は港区赤坂。地下鉄の赤坂見附駅から徒歩三分の繁華街に「函館朝市いくら屋」赤坂見附店がある。ここはサラリーマン人口が非常に多く、高級料亭「金龍」が目の前にあり、韓国料理店も多く立ち並ぶ。同店は、いくら丼をメーンアイテムに展開するファストフード感覚の海鮮丼が売り物だが、じつはこの店、カレーFCの「バルチックカレー」を衣替えしたもの。(株)バルチック・システムの新業態FC一号店である。((有)マネジメントプロセス フィールドマネージャー・冨塚秀行)

この店のメニューは、塩・醤油風味で味付けされた小粒で上品なイクラをメーンに、「北海いくら丼」(四八〇円・布海苔汁セットは六三〇円)、「函館番屋丼」(六八〇円)、「函館三味丼」(七八〇円)など。客単価は八〇〇~九〇〇円。ランチ客層はOLやサラリーマンが中心で、一時間で一〇〇食を超える。夜の客層は、一杯飲んだ後にいくら丼を食べて帰るという客が多く、アルコール売上げとセットで客単価は一〇〇〇円に跳ね上がるという。また、バルチックカレーは男性客九〇%に対し女性客一〇%だが、ここは、女性客が四〇%に達する。

業態転換にあたり、(1)テークアウト、イートインのどちらでも集客できる(2)調理時間がかからず回転が非常に早い(3)小スペースで運営できるなど、バルチックカレーのノウハウをフルに発揮した。

オープン初日にイートイン二坪六席で三〇〇人以上集客した実績をもとに、6月以降毎月一店のペース。「函館朝市」と「函館食堂(焼き魚や定食あり)」の二つのモデルで展開している。

店のオーナーは藤本和己氏(三九歳)。現在(有)プライドパッション代表取締役の肩書きだが、バルチックカレー創業者の吉野幸則社長とともにバルチックカレーを立ち上げた創業メンバーである。

吉野社長と同じコンサルティング会社で職場の同僚として勤務し、同氏の熱心な誘いと卓越したアイデアに共感し会社を退社。そして、二人で一〇年前、日本橋のビジネス街で手作りカレーの路上販売を始めた。

藤本氏は学生時代にイタリアンレストランのアルバイトに携わり、代理店長を経験して飲食事業の楽しさに目覚め、独立意識が生まれたという。その思いを糧にバルチックカレーの事業拡大後に独立。そして今度は吉野社長と共同出資で、バルチックカレーFCの業態転換として、この店のFC事業に着手した。

FC店の業態転換は勇気がいる。まして、好立地の成功店であればなおさらだ。それでも藤本氏は、あえて、いくら海鮮丼店への業態転換に踏み切った。FC一号店は自由な発想でチャレンジできるからだ。

藤本氏は「バルチックカレーのノウハウを最大限生かし、海鮮丼のニュージャンルを構築したい」という。

◆店舗データ

店名=「函館朝市いくら屋」赤坂見附店/所在地=東京都港区赤坂三‐一一‐一九、電話03・3586・5960/坪数席数=二坪五席/客単価=八〇〇~九〇〇円/月商=約二〇〇万円/企業名=(有)プライドパッション/代表取締役=藤本和己

◆本部データ

企業名=(株)バルチック・システム/所在地=埼玉県川越市鯨井一七一九、電話049・231・8680/代表取締役=吉野幸則/モデル収支(二坪五席スタッフ三人)=売上高二〇〇万円、材料費六六万円(三三%)、粗利益三四万円、人件費五〇万円、水道光熱費四万円、地代・家賃二五万円、その他一三万円、ロイヤルティ(売上げの三%)六万円

◆FC本部担当者からのコメント

これからのFCは、既成の概念を捨て、市場や商圏に合わせたプロデュースが必要だと考えます。藤本オーナーは、本部からの指導や新商品をただ待つのではなく、お客様のニーズや流行を敏感にとらえ、率先して販売促進を行っています。新業態の「函館朝市いくら屋」でも新しい試みをどんどん取り入れています。バルチック・システムの第二の主力パッケージとして確立してくれることを本部で一緒に汗を流した仲間として大変期待しています。

((株)バルチック・システム営業部長・城戸与志男氏)

◆藤本和己氏の経歴

一九八七年3月 大学卒業(経済学部)

4月 OA機器会社入社

八九年4月 経営コンサルティング会社入社

九三年1月 (有)バルチック(当時)役員待遇で入社

九八年3月 (有)プライドパッション設立

10月 バルチックカレー西新宿店オープン

二〇〇三年3月 海鮮丼店いくら屋赤坂見附店オープン

◆筆者からのコメント

藤本氏は本部側と加盟店側の両方を経験し、双方の立場を理解できることは強みである。また、新業態のFC一号店を任されることは、本部との信頼関係以外のなにものでもない。それだけではなく、藤本氏の外食ニーズの掘り起こし、飲食サービスの追求は、チャレンジ精神に満ちていて、既成の加盟店の概念を超越している。本部との共同開発の試みと、アンテナショップの意味合いが強いいくら屋赤坂見附店は、モデルとなるパッケージの確立が急がれるところだろう。また、海鮮食材仕入れの優位性が継続的、安定的に確保されスケールメリットが出てくればますます店舗展開が優位に進められる。

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