御意見番:女性客心理 柴田陽子・イートスタンダード取締役チーフプロデューサー

2004.01.15 279号 8面

いまの若い女性の外食傾向は、ある日は六本木ヒルズで一万円のディナーを食べ、ある日はデパ地下で三〇〇円のおにぎりを買う。以前のように一週間を平均して、「OLの客単価は二五〇〇円」という単純な計算はできなくなった。彼女たちにとっては、たとえ三〇〇円でも価値がないものは買わないし、一万円でも価値があり満足いく内容なら財布を開く。客単価で客層を分類できない時代になった。

では何が指標になるかは「感度」。感性の高い人たちが「何を好きで、何に着目して、どんなものを食べるか」に注目している。

いまは人気モデルも、普通のおばさんも同じユニクロを着る。ところが小物使いや着こなしなど、トータルのバランスで両者に差が出る。おしゃれ感度の高い人は小物使いがうまい。昨年私はロイスカフェから依頼を受け、新宿のルミネに「和の膳ろいす」をつくるお手伝いをした。リアルターゲットは一般の女性だが、そうした感度の高い上級者に認められる店を目指した。

たとえばGAPの安いTシャツでも、人気女優が着ていたといえばたちまち売れる。金額の高い安いではなく、感度の高い人たちと価値観を共有することが、いまの若い女性の行動指標になっている。

また、今の女性たちは「一食でも絶対失敗はできない」という気合が入っている。事前にインターネットで調べたり、店の下見も欠かさず、予約の段階から「席は窓際で、メニューはコレ」というチェックが入る。彼女たちに選ばれるには、料理、雰囲気、細かいディテールにまで凝って、価格も安くなければならない。

さらにいま彼女たちには、二つの傾向が顕著になってきている。ひとつは、料理や食材を具体的に上げて「あれを食べにいこうよ」という目的食べになるということ。何を出されるか分からない創作料理よりも失敗がない。

もうひとつ、これまで彼女たちはちょっと背伸びして、グランメゾンのレストランにおしゃれをして出かけることが格好よいことだった。でもいまは、自分自身に魅力のある俳優やクリエーティブな人たちが、普通の居酒屋や焼き鳥屋で自由に飲み食いする姿が格好よいと思うようになってきた。

最近の一流企業のOLたちは、おじさんが鉢巻して焼き鳥を焼いているような居酒屋に行きたがる。気どらない家庭的な空間で、おいしいものを楽しい仲間と食べられるのが一番という。見た目の格好よさでは、もう彼女たちは振り向かない。料理そのもので勝負できる価値が問われている。

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