地域ルポ 御茶ノ水 「ジローお茶の水本館」立地の悪さを克服、20代女性が8~9割
御茶ノ水橋交差から日仏会館を望んだ通りは、かつては「西地区商店会」と称していたようだが、いまはそういったとりまとめの会はなく、茗渓通りとは対象的な存在となっている。といっても人通りがなくさびれているということではない。
この通りも人が一人通れるほどの狭い歩道だが、東京芸大の附属音楽高校や、お茶ノ水美術専門学校、駿河台予備校といった教育施設が点在しているので、学生の通学道といった趣きで、朝夕の登下校の時間帯になると、交差点の信号待ちでタテに列をなすといった状況が続く。
しかし、このエリアは学校法人や教会、公益法人といったビル施設で占められているので、商業施設が進出する余地は少なく、飲食店舗も数えるほどしか存在しない。
こういった立地条件にあって、ジローお茶の水本館は交差点近くに位置し、独自の集客機能を発揮している。この店は、ジロー創業の地で、二、三年前までは木造二階建、洋菓子と喫茶、ピザカフェの店として、広く親しまれて、人々の社交の場、待ち合せの場として利用された。
しかし、施設の老朽化と営業コンセプトの変更で、新生ジローとして再出発することになり、九〇年12月に総額四億円をかけて地下二階、地上五階建の飲食ビルにリニューアル、以前にも増して地域のコミュニティースペースとしての集客機能を発揮している。
ビルは地下二階カフェレストランジロー、同一階カフェジロー、地上一階フランス菓子ジロー、同二階パスタハウス石土炉、同三階ピザハウス石土炉、五階しゃぶしゃぶ石土炉、(四階はCKと事務所)というフロア構成で、独自の飲食ゾーンをアピールしている。
店舗はリニューアルオープンしてまだ三年目を迎えたところで、営業面ではまだ上昇中になるが、メニューづくりについては手作り感覚を尊重して、作り立てのおいしさをアピール。そして、料金的には一〇〇〇~一五〇〇円以内の消費単価に抑えて、来店頻度数を高めるという考え方で、これからの店舗運営と取り組んでいく。
パスタ、ピザ、ケーキ類の客層はやはり二〇代を中心とする若い女性で八、九割を占める。しかし、五階のしゃぶしゃぶ石土炉は、ビジネスマンやファミリー客が多く、ディナーメニューとしての吸引力を発揮している。客単価四一〇〇円。店舗面積約四三坪、客席数五〇で、日商三三万円。坪売上げ八〇〇〇円弱だが、もう少し売上げを伸ばしたいところだ。
《全店舗月商約6200万円》 なお、全店舗合せての平均日商は二〇六万円。定休日なしの三〇日計算で月商約六二〇〇万円。トータルの店舗(フロア)面積二三三坪、客席数二五七席。平均坪売上げ八八〇〇円。トータル的にみても、坪売上げ一万円くらいには引き上げたいところだ。
「二階と三階は和と洋の接点、しゃぶしゃぶと五階は小皿料理をテーマにした店づくりですが、いまはお客様の口も肥えて情報も早いですから、ワンパターンでは飽きられてしまいます。やはり、日々の営業の中からニーズや嗜好の変化を読み取っていかないと、厳しい競争には生き残っていけないと思います。そういう意味でも、西洋料理に和の良さを取り入れていこうというテーマですが、看板のケーキや菓子類にしても、まだまだ創意工夫していかなくてはならないことは多いんです」(飯野伊佐雄店長)。