社員食堂の現状と問題点 下請け感からの脱皮を

1993.05.17 28号 15面

コントラクトフードサービスは、原則的には、企業と給食業者との間で契約されるもので、大きくわけると単価契約と委託管理費契約で行うことになる。

単価契約は①材料費と加工費を含めた一食当りの販売価格について、給食業務一切を請負うもの(最低でも一回の食数が三〇〇食以上)②委託企業が施設とそれに要する維持費を負担、それにより社員の自己負担分は市価より安くなる③委託管理費契約に比べると、委託企業の負担額は若干割高、一般的にはこの増加分を「食事補助金」として委託企業が直接受託者に支払っている④受託者は安定した管理費収入が得られないため、市中の営業的性格を強めるが、それだけに顧客ニーズに合わせた営業ができる。

一方、委託管理費契約は①食堂運営管理に要する人件費プラス経費プラス受益者利益を見積り、月額金額を算出して定額管理費とし、受託者に支払う方法②委託企業は食事料金として、純材料費だけを支給、つまり受託者は一定額の管理費と売上げを収入として受け取る③委託者は、定額管理費を支払うことにより社員の負担額は軽減されるうえ、料理単価イコール材料費となるため、適正な食単価で運営されているかどうかの判定が容易である(一般的に一回の食数が最低一〇食以上)、このように、委託管理費契約という形での利益確保の中で、業務を行ってきたために調理下請け企業的な業容から脱皮することが遅れ、外食産業からの新規企業の進出になかなか対応ができず、結果的に既存の得意先を守ることだけに精を出し、自主性のない消極的な企業姿勢を取り続ける企業もまだまだ数多いのが現状である。

しかし、より豊かな食事を求める潮流に沿って、献立の質と種類、適温管理、食事の提供方法、食堂ホールのレイアウトと、生産方式に改革が加えられ、ここ数年でコントラクトフード業界も格段の変化をとげている。いままでは、契約に守られているという意識があり、これが努力をおこたる最大の原因となっていた。

しかし、コントラクトフードの先進国であるアメリカでは、サービスなどが悪いと簡単に契約を打ち切るということで、このためアメリカの給食業者は、ありとあらゆるサービスを展開する。それがコントラクトフードサービスの質を押し上げているともいえる。

日本も、ここ数年でアメリカ方式を採用する企業もでてきて、契約したからと安心できない部分がでてきた。企業は、社員食堂の設備を人材確保の大きなPR効果もねらっている。また、そのビルの付加価値を大きくするという考え方もあるからである。一方、その反対も当然出てくる。例えば、給食業者が、どうしても採算があわないとなれば、契約を逆に打ち切って徹退するケースである。この事例も最近、多くなってきている。企業側は給食業者に対してメニューの品質を高めるといいながら、材料費の値上げは認めない、それで素材が悪いとか、いろいろいわれると赤字のたれ流しで、続ける必要はないではないかという判断が当然でてくる。そこで契約解除である。やはりコントラクトフードサービスは相互の信頼関係で成り立つということである。

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