この一品が客を呼ぶ・大阪:洋食の店「もなみ」ハンバーグ&エビフライ
昔ながらの店が建ち並ぶ空堀(からほり)商店街。その一画に、ランチタイムや週末には行列ができる、洋食の店「もなみ」がある。そのお目当ては、皿にドンとのってくる大判のハンバーグ。行列が嫌いな大阪人があえて並ぶのだから、そのうまさは推して知るべしというもの。遠く、滋賀や和歌山からの来店もあるという、魅力的な味だ。
活気あふれる「もなみ」のランチタイム。次々と客が回転し、それでもなお外に人が待つ。お昼の人気メニューは、サービスランチ「ハンバーグ&エビフライ」。ハンバーグとエビフライ二匹、ご飯とスープ付きで七五〇円という、リーズナブルなメニューだ。
厚みはないが大判のハンバーグは、しっとりとほのかに甘い。「肉本来の甘みを殺さないよう、あえてナツメグは使用していません」と、重里三千緒店主。
ミンチには神戸牛のみを使用しており、さらに、生で食べられるほど新鮮なものとか。当然、仕入れ値も高価だが、業者との長年のつきあいから、抑えた額で購入できているという。
「作り置きすると、水分が逃げてジューシーさがなくなる」と、ハンバーグはその場で形作って鉄板へ。平たくしているので火の通りが早く、二分半ほどでフワッと軟らかく焼き上がる。その大きさは公称一二〇gだが、どう見てももっとありそう。
「大きくしても小さくすることはない。見たときのお客さんの驚きが楽しみだから」
この店がオープンしたのは平成7年。当時は神戸で営業していたが、阪神淡路大震災で被災し、大阪へと移転したのだ。関西でも、神戸と大阪では客層は違うもの。ましてや当地は、古い住民の多い下町だ。周辺に合わせてランチを七〇〇円でスタートしたものの、当初は厳しかったという。
「そんななか、励ましてくれる商店街のご主人がいた。そして、神戸から昔のお客さんも来てくれる。頑張るしかないですね」
いつしか口コミで評判が広がり、人気店へと成長した。重里さんは、忙しくても「お口に合いましたか」と、きめ細かく声をかける。「人とのコミュニケーションを大切にしたい」という、店主の人柄にひかれて通うファンも多いようだ。
◆洋食の店「もなみ」(大阪市中央区谷町六丁目三‐一四、電話06・6763・1129)営業時間=午前11時30分~午後2時、5時30分~10時30分/席数=三一席/一日食数=約八〇食(ランチタイムのみ)
◆食材の決め手 キッコーマン(株)(千葉県野田市) キッコーマンこいくち
「ここでしか食べられないハンバーグを」というこの店では、ハンバーグにたっぷりかかったソースも手間をかけた特製。そのベースになるのが「キッコーマンこいくち」だ。ソースは、この醤油に、玉ネギやリンゴをすり下ろして、さらにミキサーにかけたものを合わせて作る。
「濃い口醤油ならではの塩加減が、神戸牛の甘みを引き立てるポイント」と、重里さん。ハンバーグ専用のソースには欠かせない存在だという。