名古屋版・繁盛店ルポ:「高砂茶寮」 古い酒蔵改造した秘密の店

2004.06.07 286号 17面

石川県松任市にある、とある商店街。通りに面したその店舗には「うまいものや高砂茶寮」と記してあるだけで、一体何の店か釈然としない。いったん中に入ってみると、小物や酒器、日本酒がそろうギャラリー空間が広がる。店主の金谷さんに案内してもらい、ギャラリーにあるひとつのドアを開けると、そこには「高砂茶寮」へとつながる庭園が広がる。何か自分だけの秘密の店といった趣だ。

「忙しい時空から、ゆったりとした時空への切り替えを演出した」というオーナーの金谷さん。店内は古い酒蔵を改造してあり、酒蔵特有の気丈なまでに堅固な土壁と太い柱が異空間を感じさせる。

店のメーンテーマはとにかくゆっくりしてもらうこと。客のほとんどが女性で二~三時間はゆっくり食事を楽しんでいるそうだ。メニューは二九四〇円のコース料理だけで、一ヵ月ごとにメニューを替えていく。

「一ヵ月ごとしかメニュー変更をしないのは食材管理の合理化とロスを少なくするため。予約のお客さまが中心であることもあり、食材のロスは〇・一%以下に抑えている。口コミだけでお客さまを増やし、広告宣伝費はすべて食材に還元している」

提供する料理は有機野菜や地元で取れる食材を使った創作フレンチ。オードブル、メーンディッシュ、デザート、コーヒーまで全一〇品を提供する。

「とにかく口コミだけでお客さまが増えてきたことに大変驚いている。休日は予約が取れないことも多く、予約が取れてうれしいと、お客さまに言われる時は最高にうれしいですね」

店で使う食材は地元の商店街で仕入れ、高砂茶寮を中心に地域全体で商店街の活性化を図る計画をしている。今後は食事だけでなく、酒蔵見学や、テークアウト商品の開発なども考えており、地域社会の発展にむけてアイデアは尽きることがない。

◆高砂茶寮=石川県松任市安田町三‐二、電話076・274・1177

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