地域ルポ 吉祥寺(東京・武蔵野) 中央線有数の商業集積ゾーン、主婦の街に変身

1993.06.07 29号 1面

一日乗降数JR二三万七〇〇〇人、井の頭線一一万六〇〇〇人(JRへの乗り換え八割)。吉祥寺は東京・武蔵野市の最大の商業ゾーンであるほか、JR中央線沿線の中でも新宿、立川、八王子に次ぐ有数の繁華を形成している。

武蔵野市の人口は、平成五年四月一日現在、一三万七〇〇〇人(男六万八〇〇〇人、女六万九〇〇〇人)、世帯数六万二五〇〇で、中央線沿線都市八王子(四八万人)、立川(一五万人)、三鷹(一六万人)に次ぐ人口規模となっている。

だが、数一〇万規模の東京区部の人口と比較するとこの規模ははるかに小さい。しかし、吉祥寺はJR中央線および総武線に加え地下鉄東西線、また、渋谷と結ぶ京王帝都井の頭線とつながっているので、地域の商圏人口は二〇〇万人前後といわれ、消費市場としての規模は大きい(武蔵野市商工経済振興課)。

データがやや古くなるが、平成元年10月に実施した武蔵野市の商業統計調査によると、市全体の販売額は約四四〇〇億円、うち物販小売業二九〇〇億円(六六%)、飲食業(料亭、酒場を除く)が三一二億円(七%)、その他一一九〇億円(二七%)という内容で、吉祥寺は百貨店など大規模小売店が多いだけに、やはり物販小売分野のウエートは大きい。

同データによると、市の飲食業の店舗数は約八〇〇店で、この年間販売額は三一二億円となっており、前回調査(昭和61年)に比べ七・九%増を示している。

しかし、店舗数は減少傾向にあり、同データでも前回調査に比べ一・三%減を示している。

店舗の中でも減少傾向の著しいのは喫茶店で、三年前の昭和61年と比較すると一六四店で、一九・二%減となっている。

喫茶店は出店コストや運営コストに対し、経営効率が悪いので、閉店や業態転換に追いやられているということを物語っている。

これに対し、中華料理や他の東洋料理(エスニック料理)は一六七店で前回比一三・六%増、西洋料理も一一一店で同二・八%増を示している。

一方、吉祥寺にやってくる来街者については、武蔵野市(商工経済課)が八年ぶりに実施した「吉祥寺市商店街調査」(吉祥寺の魅力に関する調査‐高校生以上一五〇〇人を対象に聞き取り)によると、来街者の発信地は地元武蔵野市が二六・一%が最も多く、続いて三鷹市が一三・七%、杉並区一一・六%、練馬区七・二%、世田谷区五・一%という順で、地元および沿線の三鷹市を合わせると約四〇%と、高い吸引力を示している。

また、来街者の年齢については二〇~二九歳が二一・三%と前回調査に比べ一〇ポイント近く減少しており、逆に四〇~四九歳が一八・五%(七ポイント増)、五〇~五九歳一四・六%(五ポイント増)、六〇歳以上一六・一%(八ポイント増)とヤング層より中高年層の来街者が増加している。

さらに、この年齢層を職業別で区分してみると、とくに前回の調査では学生層が三九・五%であったものが二〇・六%と約一九ポント減、代って主婦が前回では二一・五%であったのが、六・八ポイント増の二八・三%、またこれを休・平日別で捉えると休日の場合で学生が二二・三%、主婦一八・四%、平日で学生一八・九%、主婦三八・二%で、有職者の主婦(各七・三%、一〇・三%)も加えると学生の来街数を凌駕するということになり、吉祥寺はかつての「ヤングの街」から「主婦の街」へと変身を遂げつつあるとみることができる。

吉祥寺は大型小売店やしゃれた店が多くなってきているので、中高年層や主婦層にとっても魅力のある街ということのようだ。

逆にヤング層は渋谷に出向くという結果になっているのか、このディテールは不明だが、今後の課題としては飲食分野においても、主婦や中高年層などアダルトを対象にした店舗展開が望まれてくるということになる。

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