ラーメンの最新事情:二極化進むラーメン市場、無添加ブームが到来

2004.11.01 293号 4面

昨年は低価格競争が勃発したラーメン業界だが、今年はラーメンという嗜好性の高いニーズに合わせ、スープ、麺、トッピング、薬味など各パーツの素材にこだわりを強めた個性化の追求が進んでいる。その分トレンドは読みづらく、家系から料理人系、素材系と多様性は増す一方だ。さらにラーメン業界でも健康志向に対応した「無添加」ブームが起き始めている。

昨年業界の台風の目となったラーメンの低価格チェーンは、日高が9月の既存店売上高で前年同月比一%減と、昨年5月以来一六ヵ月ぶりに前年同月実績を下回ったほか、幸楽苑も7月の直営既存店の売上高が前年同月比で八・二%のマイナス。各社とも出店を加速させているが、ほかに中小チェーンでも低価格を売る店が出てきており、この価格帯が定着したことで、低価格のインパクトは薄れてきた。手軽な二〇〇~三〇〇円のラーメンか、嗜好性を求める六〇〇~七〇〇円のラーメンか、市場ははっきり二極化している。

味のトレンドでは、昨年に引き続き「和風」「醤油」「豚骨」の人気が高いが、各店で「ほかにはないラーメン」という個性化が進んでいる。ラーメンブームを牽引しているのは、インターネットのマニアによる情報戦だが、それも「かつてのように行例が長く続かなくなった」といわれる。流行の店は「○○系」などひとくくりにできないなど、各店のこだわりも、消費者の好みも細分化しているのが現状だ。

◇無添加ブームが到来 素材へのこだわりがよりディープに

◆こだわりのポイントは?

ではこだわりのポイントはどこにあるか。

まずスープでは、「こってり系とあっさり系の流行が交互に来る」といわれ、いまは「あっさり系」だ。魚介を使った和風だしが人気なのはその表れ。さらに魚介でもアゴやアユ、貝柱など高級魚介を使用したり、豚骨でもだしにゲンコツを使うのは当たり前、豚の頭やテール、鶏のもみじなどゼラチン系の素材が注目されている。コストは高くなるが、上品でコクのあるうまみが出るのが特徴だ。

鶏がらスープも、「がら」ではなく、廃鶏卵をまるごと使った「丸どり」でより高級感を出そうという戦略になってきた。「肉が付いていることで、スープにボディ感が出る。鶏卵相場に連動しコスト高になるが、チェーンからも丸どりを希望する声が圧倒的に多くなっている」とメーカーは言う。

野菜を使っただしも今年の特徴で、「豚骨、プラス野菜」というのも新しい切り口。それも西洋野菜で、長ネギではなく玉ネギで甘みを出す、ブーケガルニを使うといったコンソメ系になっている。

また「ダブルスープ」も新しい流れ。これまでは同時に鍋で煮込んでいた鶏がらや豚骨と、和風系のだしを別々に用意しブレンドする。和風系は長時間煮ると香りが飛んでしまうが、仕上げの段階で合わせれば香りが引き立つ。既製品を使っても、店のオリジナルの味を作ることができることも魅力だ。

◆差別化のキーワードは?

また、今年顕著なのは、化学調味料を使わない「無添加」などが差別化のキーワードになり始めたこと。「安心・安全」ブームはついにラーメン業界にも及んできた。これまでも学校給食や病院でこうした需要はあったが、大手ラーメンチェーンからも、こうした要望が出始めているという。化学調味料を使用しない分、天然系の調味料でいかにコストを抑えてコクを出し、味の均一化を図るかが課題だ。

トッピングでは、変わりダネではなく、チャーシュー、メンマ、煮卵、ネギといった人気の定番をいかにブラッシュアップさせていくかがポイント。こうした素材へのこだわりはさらに、肉の銘柄や野菜の産地志向へと進んでいく。

人気TV番組「どっちの料理ショー」さながら、ラーメンを構成するひとつひとつのパーツに、どれだけこだわりをかけられるかが、店の個性化になっている。

スポットメニューでは、「今年の夏はつけ麺や担々麺が良く売れた」といわれた。しかし盛夏に限らず、これらは「温かい・冷たい」と両方で根強い人気があり、「通年展開できるメニュー」としてラインアップに加える店が増えている。また今後注目されるのは「中国系ラーメン」と呼ばれる本場中国の麺類。もともと担々麺もそのひとつだが、専門店で人気の排骨麺などがねらい目だろう。

店舗のデザインも繁盛店に欠かせない要素。近年の特徴では、「ラーメン屋らしくないモノトーンの昔のチャルメラを思わせるような店構え」がロードサイドにも多く見られる。女性が入りやすい和風の趣がひとつの主流になっているようだ。

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