この一品が客を呼ぶラーメン編・札幌:「ラーメン拳」味噌ラーメン
言わずと知れたラーメンの街、札幌。なかでも、味噌ラーメンがダントツ人気なのは周知の通り。札幌のラーメン店では、五〇%の客が味噌を食べるといわれている。が、「拳」の「味噌ラーメン」の注文率は、それを上回る七〇%。常連客から「ほかにはない味」と評価されているそれは、最近注目を浴びている無加調(添加物を使わない)ラーメンだ。
「スローフード」ブームの影響か、札幌では数年前から、無加調ラーメンの店がお目見えし始めた。添加物を使わずに作るラーメンは、あっさりとしているのが特徴。だが、それでは濃厚な味噌ラーメンを食べて育った札幌人の口には、やや物足りなさが残るというもの。
その点、ここの味噌ラーメンは、無加調ながらも、これぞ札幌の味噌といえるパンチの効いた一品。とろみのあるスープと、それによく絡むコシの強い麺。辛みと塩味、そして甘みが見事に調和した、奥行きのある味わいだ。
「濃厚さの秘密ですか? 自家製豆板醤と、三種類をブレンドした無添加味噌ですかね」
そう語るのは、古屋智司店長。味噌は生臭さを飛ばし、さらに風味を出すため、中華鍋で焦がしてからスープと混ぜている。丁寧にアクを取って作るスープのベースとなるのは豚骨。それに昆布、煮干し、椎茸を加えたあっさりめだが、薄い味にならぬようにと香味野菜をたっぷり使用。そのうまみで味に厚みを出している。
トッピングは、自家製のチャーシューとメンマ、ニンニクの芽、揚げ玉ネギ、豚ひき肉、糸唐辛子。札幌の味噌ラーメンといえば、中華鍋でモヤシとひき肉を炒めてそれをのせるのが定番だが、モヤシは使っていない。
「将来は、もっともっとこだわって、予約制で一日数組だけのラーメン店をやりたいね」と古屋さん。
ほか、味噌に唐辛子やニンニクを加えた「拳」「角煮ラーメン」、丸鶏スープの「チー油(塩)」など限定メニューも人気。大抵はなんと昼時で売り切れてしまう。
◆ラーメン拳(札幌市厚別区厚別西五‐六‐一、厚別通沿い、電話011・892・1477)営業時間=午前11時30分~午後9時(火曜定休※祝日の場合は営業)/席数=一七席/一日食数=八〇食
◆食材の決め手:「特注中太ちぢれ麺」 (株)さがみ屋(札幌市白石区)
自分が食べておいしいと思った、のどごしがいい、小麦の味がする。そんな理由で、「さがみ屋」に麺を特注している古屋さん。届いた麺は、常温で七日間熟成させてから使っている。
「熟成させると、卵麺の持つ、ツルッとしたのどごしのよさと歯ごたえが、さらにアップするんです。ツヤツヤのあめ色になりますから、見た目もきれいなんですよ」
弾力のある麺は、濃厚な味噌スープと相性抜群だ。