高価すぎるフランス料理? バブルはじけて苦戦
バブルがハジけてフランス料理、中国料理、日本料理など高級店は宴会需要の落ち込みが激しく苦戦を余儀なくされ、今後の動向が注目されるが、ここでは“苦戦の王様”フランス料理にスポットを当て、その動向を探ってみた。日本で、フランス料理といえば一〇人中九人までが凝りに凝った料理とか、金のかかる料理を思い浮かべる。確かに一流ホテル、レストランでのコース料理は一人前一万円から三万円という値段が一般的で、高級イメージが強い。しかし、最近は世界の代表的料理が、居ながらにして楽しめるといった料理の国際化、多様化が進み、フランス理料に対する位置づけが変りつつあるようだ。
フランス料理といえば金のかかる難かしい料理を思い浮かべる。さもなければ、決まって「フレンチ・ソース」をかけた料理を想像する。そのソースにしても、ときには名前とそぐわない味のものさえある。
フランス料理と名がつけば月並みで、外見だけで飾りたて高いお金を取る、こんな店も少なくない。こうした背景もフランス料理低迷の一因となっているといえる。料理は時代とともに変化するといわれているが、低迷するフランス料理を浮上させるためには、いまいちど本物フランス料理の真髄を見直す必要があろう。
フランスのいわゆる「高級料理」は、人間が味覚のうえで「至福」を極めようと努力した成果である。どの一品も、長年の修練をへた料理人が熟練した風格のある技術を駆使して作りあげる。フランス人は、バターや卵や菓味草など、ありふれた材料を使っても、全体のバランスのとれた絶妙な味わいの料理を作りあげる偉大な伝統的技術をもっている。
フランスの地方料理は、「高級料理」とは、全く異なった特色をもっている。こういうと、「地方」という言葉から、ひなびたとか、大味、単調、貧弱、工夫のなさ、野暮ったさなどを連想するかもしれない。しかし地方料理とは、決して田舎料理のことではない。それはある地域で生まれた料理という意味である。似たところはほとんどないが、高級料理は、この地方料理に負うところが大きい。事実、有名なコック長はたいてい地方の村の出身者である。彼らは川で釣ったマスや、自分で育てた牛から作るクリームを、手際よくどう料理するかを修得する。死後長い年月を経た今日でも、現代の偉大なコック長として敬われている。エスコフィエによると、高級料理とよばれるフランス料理はすべてストック(だし汁)と五種の基本的なソースのできいかんで決まるという。ソースは、ブラウン・ソース、ホワイト・ソース、ベシャメル・ソース、トマト・ソース、オランデーズ・ソースである。
意匠をこらしたソースに対する自然な調理法こそ、高級料理と地方料理の大きな違いである。もうひとつ重要な違いは、迅速な輸送網が発達した今日でも、地方料理は地元でとれた材料を使っていることである。