ピカイチキッチン(52)病院給食のシステム化
●温冷管理システムの選択
料理の品質は新鮮さ、つまり出来たて感がポイントであることは周知の通りである。揚げ物、焼き物、炒め物などは熱々がおいしく、サラダや果物などは冷えたものがおいしい。
ところで、国内で使用されている病院の配膳時の温冷管理システムは、従来の保温食器、保温トレー、温冷配膳車、再加熱ワゴンシステム、パントリー再加熱システムがあり、この中で近年注目されているのが再加熱ワゴンシステムである。
このシステムは、加熱調理後急速冷却した食品をチルド状態で盛り付け保管する。その際加熱食品は専用の食器を使用し、再加熱ワゴンごとチルド室で保管する。
中央配膳方式の場合、このチルド室を主厨房に配備するが、パントリー配膳方式の場合はパントリー厨房に配備する。提供直前約三〇分前からこのチルド庫内で加熱食品だけを再加熱するが、冷菜は加熱されず、保冷状態を保つことがポイントである。
このような方法で再加熱した食事の温度管理はほぼ完璧で、熱々の料理と冷たい料理が同時に提供できる。
●パントリー配膳と中央配膳の選択
病院給食の配膳形態はパントリー配膳と中央配膳に分類され、厨房内で調理から盛り付けまで行い病棟へ搬送し提供する方法を中央配膳という。
一方、厨房で調理した食事の再加熱や盛り付けを各病棟のパントリー厨房で実施する方式をパントリー配膳という。食事の品質を向上させるためには、調理後患者に食事が届くまでの時間が短いほど食事の品質は高いと考えられる。
したがって、厨房が患者の食堂や病室に近い小規模病院の場合、中央配膳方式が適切と考えられ、大規模病院のように病棟や患者食堂が分散している場合は、病棟ごとにパントリー厨房を配置することが適切と思われる。
特にクックチルや真空調理システムの導入では、盛り付け後の配膳カートはパントリーにチルド庫を配置して保管する。再加熱はこのチルド庫内で終了した後、患者に食事が届くまでの時間を短縮することができるメリットがある。
大規模病院の中央配膳方式は、厨房から患者サイドまでの食事の搬送に時間がかかり品質も低下しやすいため、食事の品質を向上させるように再加熱をチルド庫内の再加熱カートで実施することが重要である。
この方法は再加熱に要する人件費の低減にも効果的であり、パントリー厨房にスチームコンベクションオーブンなどを配置して再加熱する方式は、再加熱後ポーション盛り付けや配膳に時間を要し食事の品質が低下しやすいと考えられる。
したがって、病院給食の配膳方式は、食事の品質や経済性に大きく影響することを十分認識し計画する必要があろう。
(厨房サニタリーコンサルタント・本山忠広)