旬を彩る!冷凍切り身魚のススメ(12)クロムツ
スズキ目ムツ科の硬骨魚で、近縁種であるムツよりも黒みがかった濃い体色をしている。大きいものでは体長1m近くになる深海魚で、北海道南部から南日本にかけての主に太平洋岸に分布する。昔から高値で取引され、白身魚ながら脂質をよく含んだ濃厚な味が愛でられてきた高級魚だ。脂がのる冬が旬とされ、煮付けや鍋物がよく合うとされている。昨今は、クロムツの仲間で、クロムツに酷似するオオヤセムツ(英名=カーディナルフィッシュ)がクロムツとして一般化し、日本人志向の味わいと値ごろ感から人気魚となっている。
「ムツ」という名は、「脂っこい」を意味する「ムツっこい」という方言から来ているという。その名のとおり、ムツ科の魚は白身魚でありながら脂がのっている。その肉は、やわらかくて食べやすく、非常においしい。そのため老若男女、幅広い層から人気がある。しかし、高価な魚であるため、利用が限られてきた。
だが昨今は、クロムツに酷似するニュージーランド近海産のオオヤセムツ(カーディナルフィッシュ)がクロムツとして一般化。脂控えめで食べやすく、価格もクロムツの1/3程度で入手しやすいことから、本来のクロムツに勝る人気を集めている。業務用の冷凍切り身魚を使えば、低コストで高級メニューを打ち出すことが可能だ。
もともと高級感のある魚であるため、消費者の志向は意外と保守的。特別な調理法を用いて冒険するよりも、煮付け、照り焼き、鍋といった、ベーシックな和食が好まれる。
なかでも一番のお薦めは煮付け。塩焼きももちろんおいしいが、脂が若干強すぎる。クロムツのような脂分の多い魚は、脂を汁の中に溶け出させ、くどさをうまく隠してくれる煮付けのような調理法がベストだと言える。
味のしみたやわらかい肉は、まさに絶品。一口に煮付けといっても味付けは醤油や味噌などいろいろ考えられ、オーソドックスながら小技を効かせた料理法を工夫する余地はある。
煮付けのほかには、西京味噌などを使った味噌漬けや粕漬け、照り焼きなどもとてもよく合う。味噌なども、脂分のくどさを中和して、味のバランスを調える役割を果たしてくれる。
また、クロムツは鍋の具として食されることも多い。やはり汁の多さが、脂分を程よく薄めてくれる、魚の性格に適した食べ方だ。鍋もだしベースの薄口のものから、醤油や味噌で濃い味付けをしたものまで、さまざまな食べ方が楽しめる。
以上のように、和食の定番おかずとしての調理法が一番といえるクロムツだが、実は中華料理でもよく使われる食材だ。揚げ物にして甘酢をかけたり、辛みの効いたスープの鍋に入れるなど、ちょっと違った料理法を提案したい時には中華風も面白い。また、西洋料理では、バターや油を使ってフライパンで焼くポワレなどが定番メニューで、高級感のあるフランス料理の一品としても使える。
◆製品概要:オカフーズ「黒ムツ(カーディナルフィッシュ)」
オカフーズは、ニュージーランド近海で漁獲されたクロムツ(カーディナルフィッシュ)を漁船から直接買い付け、自社一貫ライン(加工・流通)を通じて供給している。一般的な切り身製品とサイズは常時ラインアップ。形状や分量など多種多様なオーダーカットにも迅速に対応し、予算・用途に応じて的確な商品を提案している。冷凍切り身サイズは、40g、50g、60g、70g、ほか。
●(株)オカフーズ(東京都中央区築地2‐4‐2、電話03・3543・9515)