地域ルポ 「しんみち通り」(東京・四谷)(2)アジアエスニック料理「梁亜洲」
この通りの特性は、具体的な商業データはないが、日中は昼食か喫茶利用が主体で、夕方までは人の往来もまばらになる。
夜は飲酒客が主体になるが、10時、11時には閉店する店が多いので、来街者は8時以降途絶える。隣接地の銀座や赤坂、新宿など異なって、地域外からの来街者は少なく、むしろ地域のサラリーマンなどはこれらの地域に流れていくといったケースが多いという。
「深夜営業している店も少ないですし、風俗営業の店もありませんから、夕方の退社時になりますと、駅に向かって帰って行く人の方がはるかに多いという印象です」(新道会峯村会長)。
地域への来街者は飲食店舗一〇〇店、一日当たりの来客数を一店舗平均一〇〇~一五〇人として、一万人から一万五〇〇〇人。これはJR四ッ谷駅の一日当たりの乗降者数二〇万人の五%から七・五%という数字になる。
これはあくまでも推計だが、この通りの飲食店舗の客席数は平均的にみると、四〇、五〇席くらい。客回転は一・五から二回転までという声が多いので、通りへの来街者が一万人から二万人というのは、そうブレのない数字といえる。
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地域の文化特性を考えて、エスニック料理三店を取材したので、その運営状況をレポートする。
ベトナム、タイ、ラオスなど七ヵ国の主力メニュー
外堀通りからアプローチした、しんみち通りの左角。ビルの地下一階。昨年12月オープン。以前はこの店は居酒屋だったが、居抜きで出店した。
店舗面積一〇坪。客席は力ウンター六席、テーブル席二四席というコンパクトな店だ。出店資金がかけられなかったことから、内装も厨房設備もそのまま活用、エスニック料理の店といっても、壁面に貼ってある料理写真が、その雰囲気を訴求している。
オーナーのリャン・チョウカ(梁超華)さん‐写真‐は一九四四年ベトナム生まれ。サイゴン陥落で七四年にラオス、タイなどを経て、日本にやってきた。
小さいころから料理が好きだったので、レストランでの下働きをしながら、日本社会にとけこんで信用を得、平成元年7月、横浜(中区新山下)日本最大級のシーフードレストランの総料理長に迎え入れられるなど大きな実績を築いた。
ベトナム人の日本での成功者といってもよい。店は水道橋、西川口にも出店している。すべて直営だ。いまは個人経営だが、近く法人化して、さらに多店舗化していくことも考えている。
料理はアジア、エスニック(亜州)料理とアピールしているだけに、ベトナムを初めタイ、ラオス、カンボジア、マレーシア、中国、韓国料理などを主力に幅が広い。
人気メニューはマレーシア風スジ煮込み、ベトナム風春巻、ラオス風焼めし各八〇〇円、ベトナム風タラバガニ蒸し(二人前)二八〇〇円など。
リャンさんに言わせると、メニューは五〇〇〇品目くらいは作れるという。大変な才能というほかはない。最近、「アジア・エスニック料理」(柴田書店刊、三二〇〇円)と題する本も書いた。
客層は若い女性やカップルグループ客が多い。売上げは日商四〇万円を目標にしているが、現在はまだその三、四割の実績にとどまっている。
リャンさんは、売上げの一部を福祉に寄附するなど人間味豊かでハートのある人だ。店がはやるよう声援を送りたい。