飲食店成功の知恵(26)開店編 「プレ・オープニング」
《一週間のトレーニングを》 「あなたはどういう理由で飲食店を選びますか」というアンケート調査をしてみると、「第一印象の良さ」と答える人が圧倒的に多い。裏を返せば、第一印象の悪かったお店には二度と足を向けない、ということだ。そして、その第一印象の良さの判断基準も、年々厳しくなってきている。この事実をまず、しっかりと肝に銘じていただきたい。飲食店とは一回勝負。「待った」なしの真剣勝負なのである。この認識がなければ、商売の厳しさには耐えることができない。
お客を迎えるのだから、万全の態勢で臨まなくてはいけない‐‐誰でも分かっていることだが、ひとつの仕事に慣れるにはやはり、一定の時間がかかるものだ。人間、頭では理解していても、なかなか身体が動かない。
だから、経験のあるなしにかかわらず、オープン前にトレーニングを積んでおくことが不可欠になる。この期間をプレ・オープニングと呼ぶが、私は最低でも一週間が必要と考えている。例え経験者であっても、よほどのベテランでない限り、お店のスタイルが変われば、勝手も違ってくる。
一週間のトレーニング期間を取るためには、少なくともオープン予定日の一週間前には、内装工事のダメ工事まで終えて、業者からの引き渡しを受けていなければならない。
こういうと、一週間も開店休業状態にしてムダに家賃を払うなんてもったいないと考える人がいるが、必ず成功させたいと思うのなら、長期的な視点で計算し直してみることだ。決して損ではない。これも、必要な投資のひとつなのである。適正な投資をしなければ、適正な利益は返ってこない。開店したらその日から、お店はプロの集団でなくてはならない。お客はその技術に対しておカネを支払うのである。最初のうちは‐‐などという甘い考えは、お客には通用しないのだ。
トレーニングには、したがってアルバイト、パートにもその分の給料を支払って参加してもらわないといけない。飲食店の仕事はすべからく、チームワークなのである。
《全員で試作品と試食》 トレーニングは
①調理
②サービス
③調理とサービスとの連携
の三つに分けられる。
調理に関しては、担当する者全員がレシピー通りに仕上げられるか、を重点チェックする。安定した味を作れるようになるためには、やはり回数をこなすことが必要。しかも全商品について試作するのだから材料費はかかるが、これも開店費用として考えなければいけない。商品に自信がもてないようでは、飲食店を開店する資格はないのである。
さらに、お客が来たことを前提にして、注文を取ってから料理が出来上がるまでの時間もチェックしておく必要がある。これは③の訓練でもあるわけだが、知人とか身内の人を呼んでお客になってもらい、率直な感想を聞いてみるといい。
また、すべての料理をひと通りホール担当者(アルバイト、パートも含む)に食べさせて、どんな料理なのかを覚えさせることも大切。お客にたずねられてスラスラと説明できないようでは、話にならない。
サービスについてはまず、発声訓練と動作訓練を徹底して繰り返すことだ。ふだんは明るく元気のよい声など出していないから「いらっしゃいませ!」をキチンと言えるようになるだけでも、やってみると大変なものだ。腰をかがめる角度(深く)とか、水のグラスを置く位置など、マニュアル通りの接客も、本当に身に着くまでには時間がかかる。
以上の訓練に合格して初めて、本当のオープンを迎えることができるのだ。
フードコンサルタントグループ
チーフコンサルタント 宇井 義行