関西版:こだわり食材で安全・安心提供 自社養殖トラフグ100%「玄品ふぐ」
高級とされたトラフグ料理が手ごろな価格で食べられる今「安い・おいしいは当たり前。これに安全性を加えて日本一の外食企業をつくりたい」とは「玄品ふぐ」を運営する(株)関門海の山形圭史社長。玄品ふぐは、ぷりぷりの食感が人気のてっちり、上品で淡泊な味のてっさ、ジューシーな唐揚げなどがウリのトラフグ料理専門店。IHヒーターのテーブルで提供するてっちりは夏場も暑くならず、目にも柔らかい紙鍋が女性に人気だ。
関西のイメージが強いフグ料理だが、玄品ふぐは99年に進出した関東の店舗数が若干多く56(直営44、FC12、うち大型店は10)を数え、関西43(直営32、FC11)、九州1のトータル100店舗を展開している(06年11月期末)。だが、フグ消費量日本一が大阪であるように、玄品ふぐの最大級・最高売上げ店舗は大阪ミナミの「法善寺の関」で、席数136、年商3億5000万円を誇る。今期は直営・FC合わせて20~30店舗の出店計画。昨年12月22日にオープンした今期1号店「梅田東通の関」は、関西第2の旗艦店として集客が期待されている。
同社のフグは自社養殖によるトラフグ100%。毎年約2億円の研究開発費をかけ、よりおいしく安全な養殖技術の開発に取り組んでいる。創業は1980年、「てっちり1980円」を掲げ大阪府藤井寺市に開店した「ふぐ半」が同社のルーツ。養殖トラフグを仕入れ、低価格で提供し好評を博すが、創業者の山口前社長と山形社長は「無投薬で安心・安全な養殖フグを作ろう」と専門家の声を求めて大学の門戸をたたく。99年に研究開発室を設置し、02年には約5億円をかけ三重県に陸上養殖場を作り研究を続ける。現在は10人以上の研究開発チームを有し、中国に4ヵ所の養殖場を持つ。同社の養殖フグは流通時に抗生物質や薬品を一切使っていない。
自社を「研究開発型外食事業」と呼び、「おいしく安全な養殖トラフグの研究開発には、たくさんのおまけが付いてきた」とは山形社長の弁だ。
関門海の研究開発室には5つの「玄品技術」がある。安全なトラフグを作る「養殖技術」。鮮度を維持しながら氷温熟成などでおいしさを向上させる「うまみ向上技術」。フグの需要最盛期に仕入れを集中させず、通年で安定仕入れを可能にした瞬間冷凍の「長期保存技術」は輸送コストの削減にもなった。さらに、味覚センサーやアミノ酸分析器で味覚をデータ化し、味の研究を行う「味覚分析技術」。食材を蘇生塩水にくぐらせ農薬などの有害物質を中和させる「安全確保」。
メニュー開発や食材仕入れに熱心な外食店はたくさんあるが、食材そのものの研究に没頭する会社は数少ない。主要業態であるハレの日食材のフグやカニだけでなく、玄品技術をあらゆる食材に反映させ、より安全な食材開発に努めたいとしている。同社の短期的目標は市場で売られる食材に技術を加え、安全でよりおいしい食事を提供すること。長期的目標は養殖で優れた食材を作ることだ。
安全な食材の追求は外食店以外にも波及し、3年前にはてっちりセットの期間限定宅配販売をスタート。昨年秋には(株)バルニバービとの共同事業で同志社大学内に学食カフェを出店し、弁当販売の中食事業にも参入した。将来的には学校給食や、きちんとした食器で提供するおいしい病院食構想もある。
「たまたま巡り合ったフグが食材の研究・開発に広がった。将来的には1万店舗を出店する。1店舗で年間1万人の来店客があるとして、トータル1億人に安全な食を提供したい」と山形社長の夢は大きい。
◆「玄品ふぐ」関西第2の旗艦店「梅田東通の関」(大阪市北区堂山町4‐17、電話06・6311・0129)オープン=06年12月/営業時間=平日土・午後5時~午前3時(ラストイン)、日祝・正午~午後11時(ラストイン)/席数=110席/平均客単価=6000円/人気メニュー=「醍醐コース」(5300円=泳ぎてっちり、泳ぎてっさまたはぶつ刺し、ゆびき、トラフグ唐揚げ、雑炊、デザート)
◆(株)関門海(大阪府松原市、電話072・349・0029)代表取締役社長=山形圭史/創業=1980年9月/資本金=3億0111万円 /売上高69億0800万円(06年11月期)/業態=トラフグ料理専門店「玄品ふぐ」、カニ料理専門店「玄品以蟹茂」、その他3業態