売れるメニューのヒント:弁当編(6)
○気持ちを伝える商品名
◆ちょっと小さくてごめん
スーパー玉出 恵美須店/大阪市西成区
カツ丼298g・牛丼218g/各158円
内容:カツ丼=豚カツ、玉ネギ、卵、かまぼこ、たくあん、白飯。牛丼=牛肉、ナムル、ネギ、紅ショウガ、白飯。
見所:相当変わった料理でもない限り、丼の名前くらい誰にでも分かる。だが、丼に込められた作り手の気持ちは誰にも分からない。この丼には「ちょっと小さくてごめん」と書いたシールが張ってある。普通のカツ丼や牛丼よりもサイズが小さいので謝っているのだ。事務的に「ミニカツ丼」や「牛丼(小)」と書かれるよりも、作り手の人柄が伝わってくる。しかし、価格は分量を割り引いた以上に安いので、謝るどころか誇ってほしい。
実用性★★ 生産性★★ 経済性★★ オシャレ★★ 容器適性★★ ユニーク★★
○価格重視の簡易包装
◆カニちらし寿司
ホクノースーパー 中央店/札幌市厚別区
230g/298円
内容:ズワイガニ、イクラ、大葉、酢飯。
見所:本土の人間にとってカニやイクラはごちそうだ。この寿司をオシャレな容器に詰め替えて、千歳空港で売ったら2倍の値段でも飛ぶように売れるだろう。だが道産子にとっては、普段から見慣れた日常食。そんなまやかしは通用しない。この寿司は安価なフードパックを使って包材コストを絞り298円で売っている。これなら道産子でも買いたくなる日常価格だ。カニの上にのせた大葉の上に、さらにカニをのせる盛り付けの工夫は、カニを見慣れている道産子対策か?
実用性★★ 生産性★★ 経済性★★ オシャレ★★ 容器適性★★ ユニーク★★
○洋風ネーミングで中華を導入
◆あんかけオムライス
街角キッチンはしもと/札幌市中央区
595g/441円
内容:オムライス(白飯)、中華あん(エビ、イカ、豚肉、かまぼこ、タケノコ、ニンジン、キクラゲ、ほか)。
見所:上にかかっているのは中華あんである。あんの下は卵焼きで包んだ白飯である。すなわちこの弁当は中華の料理人に言わせれば「中華丼の卵焼き包み」、または「天津丼のグレードアップ版」なのである。だがこの店では「オムライス」のあんかけバージョンとして売っている。ネーミングをアレンジすれば、洋食店でも中華料理が売れるのだ。業態別に商品規制が厳しいデパ地下や駅ビルでも、このネーミング手法を使えばおとがめなしだ。
実用性★★ 生産性★★ 経済性★★ オシャレ★★ 容器適性★★ ユニーク★★
○時代おくれの美徳
◆日の丸弁当
ラッキー北野店/札幌市清田区
372g/398円
内容:鶏つくね、サケ塩焼き、きんぴら、海苔の佃煮、卵焼き、梅干し、海苔、鰹節、白飯。
見所:白飯の上には大きな紀州南高梅がのっている。白飯の下には海苔とおかかが入っている。おかず部分は普通だが、白飯部分は他の弁当とは比べものにならないほどの手間と原価をかけている。目立つ部分は頑張っても目立たない部分は手抜きする今風の弁当が多い中、地味だが人が見ていないところで努力する時代遅れの弁当だ。日本が貧しかったころのものより多少中身は豊かになっても、その大事な精神は受け継いでいる「日の丸弁当」だ。
実用性★★ 生産性★★ 経済性★★ オシャレ★★ 容器適性★★ ユニーク★★
○大船に乗ってプレッシャー解放
◆エビカツサンド、ハムカツサンド
スーパーアークス 菊水店/札幌市白石区
エビ=142g/120円、ハム=152g/120円
内容:エビ=食パン、エビカツ、タルタルソース、トマト、パセリ、グリーンリーフ。ハム=食パン、ハムカツ、ゆで卵、トマト、パセリ、グリーンリーフ。
見所:サンドイッチの具は、いつも上下のパンにプレッシャーをかけられている、サラリーマンでいえば中間管理職のような存在だ。パンの型にはまらなければならず、自分をアピールするのは容易でない。だがこのサンドイッチは、舟形のオシャレな厚紙の下敷きパッケージが全体を下から支えている。おかげで、パンも具も大船に乗った気分になれるのだ。普段は押さえつけられてペチャンコになっている具も、思いっきり羽が伸ばせて幸せそうだ。
実用性★★ 生産性★★ 経済性★★ オシャレ★★★ 容器適性★★ ユニーク★★
○高級事例を学び自信を持って名乗ろう
◆焼豚シュゼット
いかりスーパーマーケット芦屋店/兵庫県芦屋市
126g/248円
内容:焼き豚、たれ。
見所:ドイツ語で「シュゼット」。誰がどう見ても「焼き豚の切れ端」を寄せ集めて売っているように見える。だが売っているのが芦屋の高級スーパーとなると事情は異なる。店員いわく「故意に焼き豚を小間切れにしている」と言う。「チャーハンに入れる、サラダにトッピングする、オードブル一品など、使い方は自由自在」なのだとか。もちろん、故意に小間切れにしている努力をお客は知らない。貴店の類似商品が仮に焼き豚の切れ端ならば、「シュゼット」と名乗れるだけの知識と勇気を持とう。
実用性★★ 生産性★★ 経済性★★ オシャレ★★ 容器適性★★ ユニーク★★★
○北海道名物カレー第3弾
◆ホワイトカレーオムライス
なごみ村/札幌市中央区
390g/600円
内容:オムライス(スパイスライス)、ホワイトカレー、グリーンピース。
見所:カレーラーメン、スープカレーに続く第3の北海道名物カレーとして最近話題の「ホワイトカレー」。クリームシチューそっくりなのでマイルドな辛さに見えるが意外に辛い。おとなしそうな白熊が実は凶暴だったみたいな、見た目と味のギャップが良い。またルーが白いので、野菜の色が奇麗に映えるのも良い。しかもこの弁当はスパイシー味のオムライスを使っている。色が美しいだけでなく、卵のまろやかさと辛さとのメリハリも良い。
実用性★★ 生産性★★ 経済性★★ オシャレ★★★ 容器適性★★ ユニーク★★
(メニュー取材日 2007年2月28日~2006年11月1日)