シリーズ・繁盛店の厨房(25)続・厨房レイアウトの良否

1993.10.04 37号 18面

《約90%は右利き》 レイアウトの良否を具体的に検討するとき、まず調理とサービス動線にムリはないかをみることである。

人は調理するために、移動しながら次々に別の作業をする。この一連の人が動く範囲を動線ということは前にも述べたところである。

例えば、食材を冷蔵庫から取り出して↓洗う↓切る↓加熱する↓盛り付けるなど、この関係を調理のトライアングルといい、調理動線の原点でもある。

この動線は、なるべく後戻りがなく、互いに交差しないで主要セクションと最も短く結ばれていることが重点である。つまり、動線は短いのが理想で、動線が短かければ、人はあまり動かないで各調理作業ができるから疲労が軽減される。

この人の疲労の元をなくす方法としては人体動作に逆らわないレイアウトつくりをすることで、ここがレイアウトの良否の別かれ目でもある。

人はみな一様に心臓のある左脚を軸として動作する習性があり、もう一つは人の九〇%以上が右手利きだということである。このことについては、当初詳しく例をあげて検証したところでもある。

といっても、建築枠によっては、この理想的な人体動作の原則を採用できないこともあり、その際どこが重点かの選択肢で、完成したレイアウトは多分に妥協の産物になる。そこで、店舗設計と厨房設計は同時進行でなければならないゆえんがここにある。

例えていうなら、ウエートレスがコーヒーをいれて客席に向かうとき、右回りか、左回りかの動線決定はひとり厨房だけでなく、当初の店づくりとも関係がある。

次のレイアウトの良否は、過不足がないかで、過不足とは厨房の骨格である厨房スペースと、そこに設置される厨房機器が営業コンセプトに合致しているかどうか。良いレイアウトとは、この二つがほどよくバランスしている。

それは、適切に配置された各々の厨房機器の前に整然と、有機的に連携している動線通路の空間部分と、各設備機器が有している床面を埋めている部分との比較によって判断する方法で、先にも述べた一つの基準があり、これをクリアしていることである。

例えば、小厨房は三・〇以上、大厨房の場合は二・〇以上というような係数を使う。つまり、床面積を占有している厨房機器の二~三倍は空間動線スペースが必要だということである。この空間とは、調理や盛り付け作業のために人が自由に往来する部分スペースのことである。

この各機器間の動線スペースが広過ぎれば機器間の歩行距離が長く、トライアングルの方則が守れない。逆に短く狭ければ互いに接触し合う。刃物を持つ人の後方の通行に不安を与える。

したがって、最初の店づくりの線引きをするときが重要で、やや狭いスペースから始まって、次第に広げて現実に近づけるのが賢明。

厨房コンサルタント

島田 稔

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら