飲食店成功の知恵(32)開店編 メニュー価格をどう決める

1993.10.18 38号 9面

メニュー価格をいくらに設定すればいいのか-開店に当たっての最も重要な仕事のひとつのはずなのに、意外と無頓着なお店=経営者が多いのにしばしば驚かされる。

飲食店の売上げは、客数×客単価で決まる。メニュー価格はまず、この客単価を決定するが、客数にも大きく影響する。そんなことはだれでも知っている、と思う人もいるだろうが、実はここでひとつ、大きな考え違いというか誤った思い込みがあるようだ。

たしかに、価格が高ければ客数が減り、逆に安ければ客数が増える、という“公式”はある。しかし、何事も公式通りにうまくコトが運ぶのであれば、だれも苦労はしない。というより、いまの時代は、そういう使い古した公式が通用しにくくなっている。お客の価値観が大きく変わってきているからである。

たとえば、長引く不況で最近は軒並み対前年比割れを余儀なくされているとはいえ、ハンバーガーやフライドチキンなどを主力商品にするファーストフード・ショップの売上げの落ち込みは、飲食店全般のそれに比べてまだ小さいケースが多い。にもかかわらず、その客単価は決して安くはない。なぜなのか。

このなぞは簡単に解ける。単品の価格は低めに設定しているが、二品、三品と組み合わせるように巧みに誘導しているのである。その結果、客単価を稼ぎながら客数も確保することを可能としているわけだ。

また、競合同業店よりも高めの設定をしていながら、圧倒的な集客力を誇るお店というのも、珍しくはない。どうして集客できるのかといえば、雰囲気やサービスをも含めたトータルな商品力があるからだ。いいかえれば、付加価値が高い。お客はたんに複数のお店の価格を横並びに比較するとば限らない。むしろ、いまのお客は、商品の価値と価格とのバランスを厳しく見極めるようになっている。中身がないのに“便乗”して高く設定してはダメだが、納得させるものがあればお客はついてくるのである。

“公式”はある意味で生きている、が、単純な当てはめ式では通用しない。公式が教えているのは基本的なお客の心理だが、いま大事なのは、その心理をどうくすぐり誘導していくか、という“応用問題”なのである。無頓着に決められるはずがないのだ。

もうひとつ、きっちりと考えておかないといけない問題がある。いかにして利益を生み出すか、ということだ。

ここでよく勘違いするのが、薄利多売という方法論である。結論からいえば、一般に小規模店では成り立たない。席数に限りがあるからだ。しかし、お客の利用時間帯は短く集中するのがふつうだから。客数はますます限定されてしまう。ファーストフード・ショップが成立するのは、席数が“無限”のテークアウトを前提としているからに他ならない。つまり、基本的に“物販業”なのであって、一般の飲食店が真似をしてはとんでもないことになる。

また、原価計算をして、そこから価格を割り出している、というお店も多い。これもいかにも教科書的な考え方だが、現実には、確実に利益を生み出す方法論になり得ていないことが多い。原価率が高ければお値打ち感も高い、ということで盲目的にやるものだから、肝心の利益がお留守になってしまう。

価格決定の本当の基準は、商品の中身、価値である。材料にしろ手間にしろ、その価値が高ければ、その分高めに設定して当然。要はお客を説得できるかどうかである。

そうでなければ、量を少なめにして安くする。その代わり、二品以上注文したくなるようなメニュー構成にすることだ。

(フードサービスコンサルタントグループ チーフコンサルタント 宇井義行)

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら