厨房のウラ側チェック(38)「食品と寄生虫」(その2)

1993.10.18 38号 21面

前号では魚介類に寄生し、ヒトに病害をおよほす寄生虫の大要を説明した。ここでは、寄生虫の感染経路の特徴と寄生虫感染を予防するための注意点について述べる。

寄生虫は、ヒトに感染する場合、寄生虫の発育過程の中で中間宿主と呼ばれる淡水貝のマメタニシ、カワニナやミジンコ、オキアミなどの第一中間宿主や淡水魚のアユ、フナ、コイ、ドジョウ、マスなど、海水魚のサンマ、アジ、サバ、タラ、カツオ、ニシン、マグロ、イカなどの第二中間宿主をへて、感染幼虫になり第二中間宿主とともにヒトに摂取されて感染を起こすのである。

この第二中間宿主と呼ばれる魚介類が、われわれ日本人が副食として常食することに若干の危険を脅している。例えば、アニサキスは海産小型魚のサバ、ニシン、カツオなどの魚肉とともに人体に摂取され、感染幼虫が移行すると胃内に侵入し腹痛を引き起こしたりするのである。このような寄生虫の感染を予防するためには、次のポイントに注意しながら魚介類を摂取して下さい。

まず第一に、煮たり、焼いたりする時は、魚介類の中心部まで十分に加熱すること(六〇度Cで三〇分以上の加熱が必要)。

第二に、零下二〇度Cで二四時間以上の冷凍をすれば死滅する。

第三に、鮮魚を放置すると、内臓の表面から筋肉部に移行するものもあるので、できるだけ早く内臓を除去し、下処理を速やかに実行すること。

第四に、調理器具を介して幼虫が感染することがあるので、良く洗浄して、消毒をすることが肝要である。

第五に、魚介類の内臓を生食しないこと。

第六に、淡水魚や海水魚の寄生虫が多い魚種を熟知すること。

第七に、海産魚介類、特に、北洋または北洋回遊魚を生食する時は、寄生虫を意識し、調理師は魚を良く見て調理すること。また、腹部の筋肉は厚めに切り除くことが肝要である。さらに、観察眼をするどくするためには、刺し場の照度三〇〇ルックス以上が必要となる。

以上が食品衛生監視員協議会の指摘である。

なお、ヒトに無害であるが、商品価値が下がる物として、ブリ糸状虫、ラジノリンクス、テンタクラリア、ニベリア、ディディモゾイド、ベンネラなどが知られている。

(食品衛生コンサルタント 藤洋)

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