地域ルポ 恵比寿(渋谷区) 東口周辺の整備事業進む、今秋には都市ビル完成

1994.02.21 46号 6面

JR恵比寿駅東口地区が大きく変わろうとしている。サッポロビール恵比寿工場の跡地利用として、昭和62年、東京都の「特定住宅市街地総合整備促進事業地区」に指定されたのに伴って、恵比寿駅周辺の整備も進められることになり、地域一体型の再開発事業が進行中であるからだ。

今年8月竣工(10月グランドオープン)予定のサッポロビール工場跡地再開発の「恵比寿ガーデンプレイス」(新複合都市)は、この街のラウンドマークとなる地上四〇階建て、高さ一六mのオフィスタワー「恵比寿ガーデンプレイスタワー」が予定どおりの進捗で、1月末現在八五%を完成しており、周辺を威圧している。

住宅、ホテル、レストラン、シアター、デパートなど関連施設も、予定通り順調に工事が進んでおり、この8月には同時オープンする。

この複合都市が完成するとオフィス人口八〇〇〇人、住宅人口三〇〇〇人、来街者四万~四万五〇〇〇人の新しい街が出現することになり、恵比寿地区はさらに賑わうことになる。

JR恵比寿駅は東口と西口に分かれているが、街としての賑わいは西口に集中している。駅の乗降者数一七万五〇〇〇人。この七、八割が西口利用者ということに加えて、地下鉄日比谷線が西口に結節しているので、両線への乗り換えで常に混雑しているという状況だ。

日比谷線の乗降者数は九万二〇〇〇人。大半の利用客がJRへ乗り換えていくので、地域にストレートに回遊していく来街者とはならないが、しかし、単純に計算すれば、少なくとも現在のJRの乗降者数一七万五〇〇〇人に、前記の恵比寿ガーデンプレイスのオフィスと住宅の人口、それに同地域への来街者を加えると一日に、二三万人前後の人が恵比寿地区に流れ込む。このため、地域の商店街は場合によっては、消費のチャンスを大きくつかむことになるわけだ。

恵比寿新複合都市の人口は来街を含め五万人規模になるが、この大半の人が交通アクセスの手段としてJRを利用するので、ガーデンプレイスが完成すると、駅の乗降者数は一挙に三割も増加することになる。

狭いホームに狭い階段、数の少ない改札口。現状でさえ増加する乗降者に駅の機能が対応できていない状況にあるのに、ガーデンプレイスが完成すると駅の混雑に一層拍車がかかる。

もちろん、JRはそのことを見越して、駅東口周辺の整備事業の一環として、平成2年に駅舎の改良と駅ビルの計画を策定、その後、平成4年7月から計画に着手、現在、施設の完成をめざして工事を進めているところだ。

この計画はJR東日本によって進められているものだが、駅舎の改良については、ガーデンプレイスの完成に合わせて8月には仮開業し、平成7年度には全工事を完了する。

駅ビルについては現在、高層部の内外装に着手しており、順調にいけば平成9年秋にはオープンする。

ビル概要は別掲のとおりで、地上一五階、塔屋一階、延床面積約二万坪。ここに駅舎ほか、店舗、事務所、駐車場などを展開する。

この駅ビルの最大の特徴は、サッポロビールと共同で幅一・二m、長さ四〇〇mのアーケード式の動く歩道を設置することだ。

これは駅コンコースからガーデンプレイスまでを接続するもので、駅からのアクセスが容易になる。

恵比寿駅からガーデンプレイスまでは歩いては遠い。とくに冬の寒い日や雨の日は煩わしい。アクセスにハンディがあれば、すばらしい施設があっても人は集まらない。

駅の東口に出てガーデンプレイス方向を見ると、山手線と平行して走る貨物線の上を動く歩道の架設工事を確認することができる。稼働時に人の往来で街が大きく賑わうことが、今から十分に想像することができる。

しかし、一方においては動く歩道ができれば、駅からの客のほとんどがガーデンプレイスに吸収されるのではないかという懸念もある。

東口は即線路わきからの街区で、西口のように来街者が回遊できるような立地にはなっていない。

このため、東口地区自体を活性化する意味でも、駅周辺を重点的に整備すべきとして、歩行者主体の広場(面積約一五〇〇坪=公開空地を含む)ほか、区道の拡幅事業にも着手している。

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