人手不足解消法(5)現実的人材確保のノウハウ

1992.06.01 5号 17面

外食産業の人材確保は、外国人のみに片寄ることなく、国内において実行したいのが本音であると思われるが、労働者が審議を要請し、雇用政策研究会がまとめた計画策定の基礎データとして公表されたものをみると、労働力人口は、二〇〇〇年をピークとして減少し、五五歳以上の比率は二〇〇一年には二七%近くに達すると予想している。

つまり、極端な労働力不足の時代が目前にせまっているわけである。

今までに、外国人労働者の問題を取り上げたが、一方、目を国内に転じてみると、どのような方法があるのだろうか。

一、縁故募集による法

一、新聞・雑誌を媒体とした募集

一、調理師学校を初めとする募集

一、職業的紹介者を通じて募集する

一、新卒・中高校への訪問募集

一、職業安定所を通じての募集などがある。

巷では、チラホラと労働倒産、つまり人が確保できないので倒産する、といったものも既に出てきている。現営業を継続し、永久に利益を確保してゆくことは大変なことである。

これを達成するためには、店舗における省力化を考えなければならない。外食産業においては、決して省力化は生やさしくない。人を減らして利益を確保というと、一歩間違えると現在の従業員に対する心理的、物理的な負担が増す。

このことにより、残った従業員がオーバーワークとなり、それでなくとも定着の悪いものが、その負担に耐えられず次々と離職者を誘発する事態となり、さらに状況が悪化するという事態を招きかねない。

従業員の確保が難しければ、できるだけ少人数で運営を考えることは当然ではあるが、そのためには設備やレイアウト、作業の合理化といった問題を先に解決するべきだろう。同じ作業をするにしても、使用される機器の性能の検討や、半成品、加工済食品も、どのように導入するかが問題となってくる。

よく見られる場面として、加工品の導入に当たって、素材と加工品を価格比較する…などといった比較にならない比較をしているところも少なくない。

今や、半成品、加工品の分野はめざましい発展をしている。

外食産業における商品が、手造りが全て素晴しいといった時代はもう終わった。それは調理の技術が徒弟制度の崩壊の中で著しく低下し、技術に対する信頼感がなくなってきているということである。

世上でいわれる「使いものにならない調理師が業界に濫れている」というこことでもある。

アルバイト、パートでも、修業を積んで、熟練技術者に比較しても遜色ないこともできる時代なのである。

雇用従業員の必要絶対数を減ずるという発想も、充足率を高めるための一法なのだ。さらに商品の品揃え生産性の向上に努力しなければならない。「集めにくい、定着しにくい」といった現状分析のための追跡調査は、どうなっているのだろうか。

先に述べた募集法以外にも最近では、自前の外食学校、調理専門学校を計画し、企業も他に頼ることなく育成をしようとする動きが多くある。他に労働者、その関係で職業訓練校の設立も真剣に検討されている。

一部経営者にみられる「自分のところほど素晴しい待遇のところはない」などを広言しているのは、時代錯誤としか言いようがない。

また、精神論で従業員を引っ張るということも同様。社会環境や住環境も変わっているのである。「私も昔は頑張った」などと言わず、余暇時間や家庭生活優先の考え方を経営者自身が考えないことには、人材開発費は“天井しらず”と言えるだろう。

未だに社会保険の加入も十分でなければ、その企業の将来は、人材どころか存続さえ危ぶまれるといっても過言ではない。

これらのこととふまえて人材確保の実際を考えてみよう。

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