飲食店成功の知恵(42)開店編 FC加盟の考え方2
フランチャイズチェーン(FC)は、チェーンを展開する本部にとっては、じつに素晴らしいビジネスの仕組みである。直営チェーンの場合は、多店化にあたってすべての費用をすべて投資でまかなわねばならないのに対し、FCは、加盟店の資本によってチェーン組織を拡大することができるからだ。むろん、ひと口にFCといっても、その規模や内容は千差万別だが、誰もが知っているいくつかのナショナルチェーンのような、大成功の可能性を秘めている。
一方、前回述べたように、FCは加盟店にとってもインスタント開業を可能にする、やはり素晴らしい仕組みである。パッケージという制約が、じつは両刃の剣であることを理解して取り組めば、誰もが簡単に一定の経営レベルを手にすることができる。
つまり、FCとは本部にとっても加盟店にとっても“ビジネス”なのである。そんなことは当たり前じゃないか、と思うかもしれないが、ここにもうひとつ、落とし穴があるので注意を促したい。
たとえば食材の値段。よく加盟金をおさめているのだから、ふつうのお店よりも安く仕入れられるのでは、と思い込んでいる人がいるが、一般にはそんなことはあり得ない。なぜなら、それでは本部としてのうまみがなくなってしまうからだ。食材費には、本部の利益が上乗せされている。そうでなければ、このビジネスは成り立たないのだが、そこのところを勘違いしやすいのである。
本部は加盟店に対しての奉仕団体ではない。ビジネスというのは、そういう意味なのだ。フランチャイズとはもともと、一定地域内での営業販売権のことだが、本部はその権利を売って利益を上げ、加盟店はその権利を買うことで利益を上げる、という仕組みがFCなのである。したがって、どこか一部の人が利益を一人占めしようとすれば、必ずトラブルが発生する。
トラブルというとすぐに本部が、と思う人もいるが、それはこの仕組みの本質が分かっていないからだ。あるチェーンの商売に賛同し、その売り方(店舗、食材などすべてを含む)を提供してもらっているのに、食材費における本部の利益を認めない、というのもまた“一人占め”発想にほかならないのである。昔から優れた商売人は、相手を儲けさせてその上で、自分も儲けるというが、まさしくその通り。一般の飲食店であっても、お客に損をさせて自分が儲けようとすれば、成り立つはずがない。商売のカンどころとは、どんなビジネスでも共通するものである。
要するに、FCに加盟するかどうかを判断する決め手は、本部の持っている売り方=ノウハウ以外の何ものでもない、ということだ。そのノウハウが、本部を儲けさせた上でしかも確実に、自分を儲けさせてくれるかどうか、判断基準は、この一点にしかない。それが納得できないのであれば、最初からFC加盟など考えないことだ。そもそも、自分だけ楽をして簡単に儲かる、などといううまい話が、世間にころがっているはずがない。
また、本部はあるノウハウは持っていても、コンサルタント会社ではないのだ、ということも指摘しておきたい。この点も、勘違いする人が少なくないからだ。
たしかに、ごく一部の優良チェーンは、ノウハウの活用性を高めるために、立地選択基準など、かなり研究してはいる。しかし、商売は生き物である。マスの論理で、個別の事例をすべてカバーすることなど不可能だ。ましてや、他のチェーンにおいて、経営指導をアテにする方が虫がよすぎるといえよう。
どんなFCも両刃の剣であること、その理解なくして、FCでの成功はむずかしい。
(フードサービスコンサルタントグループ チーフコンサルタント 宇井義行)