モヤシ、脇役から料理の主役に 脚光浴びる「ベストモヤシ」

1994.05.23 52号 23面

サトウ・ハチローが「モヤシの味は母の味、味のないところに味がある」と詩っているが、これまでのモヤシは、何にでも合う名脇役として活躍してきた。今やそのイメージを変え、主役の食材としたのが、成田食品(株)(福島県相馬市成田字大作、0244・36・7777、代表取締役佐藤正義氏)のブランド名「ベストモヤシ」である。同社は、資本金二二二〇万円、年間売上げ八〇億円の業界一、二を競うモヤシメーカー。新タイプのモヤシは、一般消費者に受入れられ、プロにもその品質が高く評価されてきている。江上料理学院院長江上栄子氏は、「ベストモヤシは、太く、しっかりして、水分が抜け難いので日持ちがし、根つみの必要がないので手間が省けて助かります。サラダや揚げ物にも使えるのが魅力的でベストモヤシを使っています」と、脇役から主役へのメニュー提案もしている。

「ベストモヤシ」は、七、八年前、消費者のアンケートで「モヤシは、日持ちが悪い、ヒゲ根を取るのが面倒だ」という声をヒントに、中国産のグリーンマッペ(緑豆)を使い、発芽率、耐性などの試験の結果、二年の歳月を経て昭和63年2月、モヤシの歴史を変えた画期的な新モヤシの製品化に成功した。

姿は、色白、姿勢正しく、太目、ひげ根、豆殻も少なく、歯ごたえシャキシャキ、調理をしても目減りのしない力強い新しいタイプのモヤシである。このモヤシの生命を支えているのが水。「背後にそびえる阿武隈山系からの絶えることのない、ミネラル豊富な水が無添加、無漂白の本物のおいしさを育てている」(石川和明営業部長)。尽きることのない栄養源の水を、一日五〇〇〇~六〇〇〇t使うという。

その昔は、薄暗いムロで育てられたモヤシも、今はすべて工場で種播きから出荷までコンピュータ管理されている。一室一〇〇m2の発芽室が二四室あり、ここで選別機により粒を揃えた緑豆を発芽させ、常に一定の温度を保つよう散水し、八日間を過ぎると立派なモヤシとなる。「この独自のシステム開発で、一年中安定した品質のモヤシが供給できる」(大橋勇夫製造部長)。収穫後、特殊な洗浄装置により豆殻とひげ根を取り除き出荷される。

野菜の新鮮さは、おいしさ。このおいしさをそのまま届けるためパック氷をダンボール箱に入れ、常に三℃の保冷庫で配送。一日生産量二五〇tのベストモヤシは、一〇t車で一日二八便が東北、関東一円、そして最近では、関西市場へと製造当日に届けられる。

主な販路は、青果市場だが、当初小売価格三〇〇g一〇〇円の「ベストモヤシ」は、なかなか受入れられず、佐藤社長の「消費者は、良いものは必ず買う」の信念を貫き通し、無料サンプル配布などでだんだん注文を受けるようになった。「モヤシは、もろくて痛み易い。この難点を解決し、工場出荷と同じ状態で届けられるのは画期的なこと。製品品質もさることながら、「ベストモヤシ」のネーミング、巾着型のパッケージ、包装印刷デザインなど今までにない新しい試み。シャキシャキした歯応え、目減りしないからトータルでは安くつく。今では市場の四八%~五〇%を占めている」(東京中央青果(株)・加工食品部長平川公一氏)。販路拡大のため「スーパー売場でのデモンストレーションを繰り返し、この積み重ねで今がある」(安斎文夫営業部長)としている。

こうしたデモンストレーションには、“もやし入りビーフカレー”“ベストモヤシサラダ”などメニュー提案しているが、逆に主婦から“ベストモヤシのかき揚げ”が逆提案されている。

昨年6月、コストダウン化に成功し、業務用「ベストフォー」(四kg)を従来の成田もやしに近い価格で提供、一四〇%の売上げ増を示し、「厳しいプロの目は、正しい評価をしている」(石川営業部長)とみる。

現在、小売用「ベストモヤシ」と業務用「ベストフォー」は、一〇対一の比率で出荷、来年の大阪工場の稼働を契機に、ヘルシー志向に、マッチしたブランド野菜「ベストフォー」は「まだまだ伸びる余地あり」とみている。

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