食の視点 FF丸かじり(10)デザート&ドリンク
▽甘いお話△
イタリアンのチーズケーキ、ティラミスの爆発的なブーム以来、デザートも日本の食のシーンの中で一つのジャンルとして確立しつつある。消費者の認知がデザートにも及んだのだ。そして、ポスト・ティラミスは何かが関心を呼び、さまざまな既存、新開発を問わずデザートが紹介されてきた。いわく、クレームブリュレ、チーズケーキ、プリン、シュークリームなど。
その一方で、キンツバやようかんのような和物にも注目が集まり、東京の下町の名店、大阪や京都の老舗の和菓子が全国に名を知られる存在となった。それらの店には、行列ができ、通信販売で手に入れようとするグルメも少なくない。中華では、ゴマまんじゅう、ハスの実のまんじゅうなどが頑張っている。洋風、和風、中華風というジャンル内ジャンルができ始めている。つまり、ジャンルとしてデザートが確立されてきているだけではなく、わが国デザートでは確実にその多様化が始まっているのだ。
▽多様化の中で△
ところで、フードサービスにおけるデザート部門にはドーナツ、クッキー、マフィン、スコーンの焼き菓子類とアイスクリーム、シャーベット、フローズンヨーグルトのような冷たい菓子がある。焼き菓子と言えば、不二家がチーズケーキのほかに、パイやタルトの店『マダム・ラモット』をオープンしているし、ロイヤルのエリザベス・マフィンが好調と言われる。
また、ミスタードーナツでマフィンを出せば、ベッカーズのようなFFバーガー店もマフィンを導入するなど最近、イギリスのデザートも人気である。特にベッカーズのような店では時間帯をつなぐ商品としてデザートは欠かせないとの政策からの導入だ。デザートでは賄えない食事性を飲茶に求めたミスタードーナツとは対照的な、そして、いかにFF系の店が苦しい状況にあるのかが分かる判断だ。
思い返せば、フェイマス・エイモスなどのソフトクッキーが人気を独占した時期もあったデザート分野だが、スター商品とはならなかった。デザートショップで初めて行列を作らせたホブソンズのプレミアム・アイスクリーム、それに続くアイス商品のフローズンヨーグルトも、サンドイッチからバーガーを独立させたマックのような企業の出現を待つことなく、デザートという大きなくくりの中に飲み込まれてしまった。
深夜でも数十人の行列の出来た西麻布のホブソンズも、今は休日に多少の混雑を見せるだけで、栄枯盛衰を感じさせる存在となっている。そして、テークアウトのアイスクリームよりもイートインの方がファッショナブルとハーゲンダッツでは、銀座に店内飲食の店をオープンさせて、パフェやソフトドリンクで二五から三〇歳代のOLやサラリーマンを狙っている。
▽プレミアム△
アイスクリームに代わってプレミアムを名乗るのが、カプチーノやカフェラテなどのコーヒー。カプチーノは、イタリアン・レストランの定番だし、カフェラテはドトールでも導入した新顔だ。
フランス生まれのカフェオレの代わりに、アメリカはシカゴのカフェラテを入れたわけだが、カフェオレはミルクコーヒー、カフェラテはミルクエスプレッソ。
また、濃いタイプのエスプレッソの売行き好調の半面、アメリカンタイプも欠かせない。消費者のコーヒーの志向も多様化しているということか。コーヒーだけではなく、紅茶のほうも多様化は進んでいる。ホットかアイス、ミルクかレモンというワンパターンを脱して、銘柄を指定させる紅茶専門店も多いが、FFで紅茶の多様化にどう対応してゆくかには難しい問題がありそうだ。FFで扱うにはあまりにも種類が多いのだ。