トップインタビュー:国際観光日本レストラン協会会長・川合信帆氏
‐‐国際観光日本レストラン協会の主旨として、「食」の楽しさを提供する、とありますが、三六年の歴史の中から事業活動についてお聞かせ下さい。
川合 昭和34年、運輸大臣の認可を得て設立された歴史ある公益社団法人です。当時、国内および海外からの外国人観光客を接遇する場合、多くのレストランは任せて安心出来にくく、運輸省のバックアップで、34年12月、外国人観光客を接遇する場合の一定の基準を設けるという意味から発足することになりました。スタート時三四人の会員数でしたが今は、四二六人です。
協会は北は北海道、南は九州まで一二の支部を設け、総務、研修、食材、広報、国際交流、税制、労務の七つの専門委員会それぞれの委員長、副委員長、委員がつき活動をしています。
‐‐具体的には、どのような活動でしょうか。
川合 国際交流では、姉妹レストラン協会のアメリカでは、カリフォルニアのロサンゼルス、ドイツは、デュッセルドルフと年一回ぐらい行ったり来たりし、昨年もオーストラリアのパースにあるレストラン協会を訪問、交流の輪を広げています。食材では、会員の希望する輸入牛肉について、畜産振興事業団に入札したり、研修では、帝国ホテルの村上さんやドイツからシェフを招聘して勉強会をやっており、今後も力を入れてやっていきたい。
‐‐川合さんは何代目でしょうか。
川合 四代目です。先の三七回通常総会で四代目会長として任命されました。初代が藤田観光の小川栄一さん、二代目が大阪つる家の出崎準一さん、三代目が大阪花外楼の徳光憲さんでした。発会に向けて関係各省庁と折衝という大きなエネルギーを出された小川会長の功績や、日本料理を世界に向けて創造発展された関西の重鎮出崎会長、徳光会長、二代に渡ってのご尽力は協会の歴史とともに着実に発展をとげてまいりました。現在の日本を取りまく、世界との一体化の潮流の中で、今回私のような和・洋・中、すしと広範囲と言えば聞こえは良いのですが何にでもチャレンジする者の所にもお声が掛かったと思います。そういう意味において、私はこれから日本の食文化を創造すると言うより統合、調整するような仕事が中心の異色な会長かもしれません。
‐‐就任の抱負について。
川合 前段でも一部述べましたが世界が一つになろうとしている現在食材一つについても、日本料理に日本の食材を全て使用することが難しい時代ですし、日本を訪れる世界からのお客様が国の数で三桁になった現在、さらに本質を求めて行くことが絶対条件であると考えます。
会員数が減っているというご指摘もありますが、本質を追求する協会としては、数の多少だけで運営全般を判断されることは、残念です。しかし、会員増強は協会による国際貢献の使命と考えておりますので特に力を入れて行きたいと思います。
‐‐ヨーロッパなどでは、二ツ星、三ツ星と格付けをしているが、日本ではどうでしょうか。
川合 顧客や世論が今よりも高まれば実現は可能だと考えられますが、必ずしも協会に必要なシステムではないと考えております。
‐‐二一世紀に向かっての協会のポリシーは何でしょうか。
川合 新規参入が非常に簡単な業界だからこそ、その企業としての理念と申しますか使命と申しますか、目標がわれわれ協会の理念と合致する企業とは是非手を取り合って行きたいと考えております。積極的に協会をアピールして、互いの企業が協会を中心に相互互恵関係が持てる活動を広めて行きますので、多くの企業の参加を期待しております。
‐‐国際化の中、会長さんのホテルでの外国人人気メニュー、また特別にやっていることがありますか。
川合 川崎市は今では日本の電子機器ハイテク産業の中心的な地区で、研修や接待が多く、宿泊の二五%は外国人です。アメリカやアジア諸国からのお客様が多く、食事は自分の意志より日本人と一緒のスケジュール化された状態ですから、外国のお客様に説明しやすいすし、天ぷらが中心で主催者からの指示に沿って出されます。時代と共にカロリー、栄養のバランスは、海外のお客様を特別扱いすることなく提供しており、外国人も日本食イコール、ヘルシーという認識を持っています。
‐‐会長さんの経営者としての戦略についてお伺いします。
川合 地域に密着し、共に歩むのが私の基本方針です。この姿勢がないと店舗を何個所か増やす場合、本社を他の地域に設置して売上げだけを集めて利益を送金しているように見られ成功しません。
やはり接遇を中心にその土地の文化、経済発展に少なからず寄与することを目標に、外国人までもベストに接客するという型の国際観光日本レストラン協会が求めるレストラン経営は、チェーンレストランのその生き方とは違うのではないでしょうか。お陰様で私が川崎市の商工会議所で副会頭を九年勤めさせて頂いており、専務も東京都、八王子商工会議所の副会頭を勤めさせて頂いております。
このようなことも地域密着路線の一つの表れかも知れません。
‐‐最近の外食市場分析と今後の展開はどうでしょうか。
川合 デパートの地下に行けば、すぐ食べられるものがある時代、外食産業は、ただ腹を膨らませるだけではダメ、プロの味で変えていく必要がある。加えて気持ち良く迎えてくれる従業員のサービスがあれば、顧客もアソコの何を食べに行こうという目的意識を持つようになり、そのような意味では、そう悲観したものではない、うまくニーズに合わせていけばいけると思う。
日本人は、個より集団を好むが、人を集める場を提供する外食産業は、もっと伸びると思うし、将来ともに大変有望な市場と見ています。
‐‐ありがとうございました。
人の和を大切にし、物静かで温和な中にも、決断したことは断固やり通す強さを秘めている。三〇歳にして大学入学、三五歳で卒業! もその一端を示すもの。
人間は三食食べなければ生きていけない。飲食業界は、流行りすたりがないと新規に参入する、人生幾多の挫折も悪い時にこそチャンスありと常に新たな挑戦を続け、ひたすら念願のホテル業、それも地域密着型の店舗作りを考えた。今は、地域コミュニティセンターづくりに夢を馳せ、昨年の藍綬褒章受章後も数々の公務をエネルギッシュにこなしている。
新しい時代を迎えた協会には個々の情熱を燃え上がらせ、どう舵取りして行くのか、期待と課題の多い新世紀を迎えようとしている。(文責・上田)