飲食店成功の知恵(46)開店編 ロードサイド立地特性を読む

1994.07.04 55号 19面

ロードサイド、大まかにいえば郊外の街道筋立地のことだが、この立地が脚光を浴びたのはいうまでもなく、ファミリーレストランチェーンの隆盛によってだった。そのため、ロードサイドというと大手チェーンの出店立地と思う人がいるが、そんなことはない。和・洋・中のレストランから喫茶店まで、個人店がどんどん進出している。

一方、ファミリーレストランチェーンにも陰りが見え始めている。客単価を思い切って下げてみたり、エリアごとのメニューの見直しをするなど、態勢立て直しに躍気になっているようだが、もはやかつての繁栄は望めないだろう。なぜなら、お客が変わっているからだ。消費者は、外食産業が考えている以上に、外食に慣れ、お店の選択、利用の仕方が上手になっている。チェーン店の画一的な味、店づくりでは、もはや飽き足らなくなっているのだ。この傾向は今後、もっと顕著になっていくだろう。少し前までは、個人店のロードサイド出店は「チェーン店のスキ間狙い」などと表現されていたものだが、これからは個人店が、大手チェーンと戦える立地になっていくと見ている。

その大きな理由は、車社会のいっそうの成熟である。そもそもファミリーレストランの急成長の背景がこれだったわけだが、消費者のマイカーの利用は、どんどん日常生活の中に浸透している。歩いて一〇分のスーパーへの買い物でも、車を使う。主婦同士がマイカーで午後のお茶を飲みに行く時代になっているのだ。

最近、各地で旧来の駅前商店街の衰退が話題になっているが、これもマイカー利用の影響だ。要するに駐車場が足りないのである。そこで消費者は、安心して車を止められるロードサイドのお店へと流れていってしまう、という図式だ。しかも、アパレルや書店、レンタルビデオ店といった小売業も矢継ぎ早に出店してきたから、ロードサイドはたんなる外食エリアではなく、便利のいい郊外商店街の趣さえ見せ始めている。

地価の高騰で、大都市の住人はどんどん郊外に流れており、その市場性は急速に膨らんでいる。また、今後は各種規制の緩和から、たとえばガソリンスタンドと外食産業が合体したような、ゾーン開発も進められていくに違いない。すでに一部の実験的事例(ガソリンスタンドとコンビニやビデオ店の併設など)が行われているが、なかなか好評のようだ。

このようにロードサイドは、時代の流れの先端を行く立地ともいうことができるが、そうかといっても誰もが、簡単に出店できるわけではない。なんといっても投資額が大きいからである。

地代は安いが、駐車場を確保するとなるとかなりのスペース(一〇〇~二〇〇坪)が必要になるし、効率を上げるためには店舗も大型(最低五〇坪以上)にならざるを得ない。また、飲食店用浄化槽の場合、工事費込みで何千万円の投資になる。さらに、厳しい競合の中で目立つための看板への投資も、相当なものになる。車は急には止まれないから、かなりの遠視性が要求されるためだ。

最後に、ロードサイドでの立地調査の注意ポイントを挙げておこう。それは、車の通行台数と想定客数である。

たとえば、いつも渋滞している道路は、素人目には交通量の非常に多いルートに見えてしまう。また、一台当たりの乗車人数も、一般には一・二~一・七人程度と、二人も乗っていないものなのだ。さらに、店前に中央分離帯があると、客数は半減する。

さらに、徒歩での来店はほとんど期待できない、ということも付け加えておく。

(フードサービスコンサルタントグループ チーフコンサルタント 宇井義行)

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