施設内飲食店舗シリーズ:ワールドビジネスガーデン(千葉・海浜幕張)

1994.07.18 56号 4面

ワールドビジネスガーデン(WBG)は、平成3年10月に竣工、今年9月で満三年を迎える。

地上三五階(最高高一五七m)、塔屋二階、地下一階の高層二棟、地上三階、塔屋一階、地下一階の低層棟(店舗、アトリウム、アネックス)などから成るインテリジェントビルで、延床面積約六万九〇〇〇坪の規模を誇る。

ここに会社事務所と飲食、物販、サービスなどの商業施設が入居するが、店舗はオフィスサポートとしての出店が基本だ。しかし、オフィス対応だけでの営業では集客は不十分であるので、店はオフィスが休みになる土・日でも営業しており、地域への来街者の集客を可能にしている。

オフィスの入居企業は、コンピューターソフト会社のアップル社をはじめ、東芝、ソニー、沖電気、富士ゼロックス、内田洋行、第一生命、積水ハウス、ミサワホーム、三井不動産など大手を含め約一〇〇社だが、入居についてはまだ空間(床面積)的には三割の余裕を残している。

これらオフィスの就業人口は約五〇〇〇人で、来訪者が同数の五〇〇〇人。トータルで一万人のビル人口ということになるが、オフィスの入居率が一〇割になれば、就業人口は八〇〇〇~一万人に増加する見通しで、これに比例してトータルでのビル人口もさらにふくらむことになる。

「企業によってフロア面積の取り方や就業人数が違いますから、正確には分かりませんが、入居率が一〇〇%になれば、就業人口で八〇〇〇人から一万人、来訪者はロビーの通過を含め倍になるのではないかと予想しております。

ですから、各店舗の来店動機もそれだけ大きく喚起されてくると期待しているのですが、現在でもメッセでイベントがあるときなどは、お客様が大勢で利用されているといった状況です」(三井不動産WBGオフィス吉岡徹也主任)。

千葉の幕張新都心はJR京葉線海浜幕張駅を中心軸として、南北および東西に拡がる。千葉県の「千葉新産業三角構想」の基幹プロジェクト、また、国土庁の「業務核都市構想」の一翼を担うものとして展開されているもので、すでにインテリジェントビルの幕張テクノガーデンをはじめ、ワールドビジネスガーデン(WBG)、東京ガス、日本IBM、富士通、シャープなどのオフィスビル、さらにはプリンスホテルやホテルニューオータニ、幕張プレナ(SC)、千葉マリンスタジアム、日本コンベンションセンター(幕張メッセ)などの都市・商業施設が完成している。これら都市・商業施設に加えては集合住宅なども整備されることになっており、西暦二〇〇〇年には就業人口一五万人、居住人口八〇〇〇世帯、二万六〇〇〇人の新都心が完成する。

WBGの店舗はすべて低層棟に集約されている。飲食分野では「マリブダイニング」の一~三階で、一階にマクドナルド、カフェクロワッサン、ロイヤル(二店)、二階甲子、杵屋、スエヒロ、寿司田、和幸、東花房、キャニーズ、オーパ(八店)、三階アルフィオ、あずさ、北一、マハラジャ(四店)など計一五店。このほかに、マリブイーストの二階にプロント一店が出店するという展開。

物販、サービス分野はマリブイーストに薬局、銀行、旅行代理店の三店、マリブウエストにコンビニエンス、書店、クリニック、ヘアーサロン、銀行の五店、マリブアネックスに銀行一店の計九店。

WBGのオフィスワーカーは、ビルの外に出ず日常的な消費や飲食がこれらの商業ゾーンで可能というわけだが、しかし、これも平日は問題はないが店にとっては土・日には会社が休みになるので、店によってはこの点の集客が課題というところもある。

・名称/ワールドビジネスガーデン(WBG)

・所在地/千葉県千葉市中瀬二‐六

・事業主体/三井不動産、第一生命保険相互会社、鹿島

・ビル施設/高層棟・地上三五階、塔屋二階、地下一階二棟(マリブウエスト、マリブイースト)、低層棟・地上三階、塔屋一階、地下一階(マリブダイニング)、地上二階(アトリウム)、地上三階(マリブアネックス)、駐車棟(一〇二四台)

・敷地面積/一万五六〇〇坪

・建築面積/五五〇〇坪

・延床面積/六万九二〇〇坪

・オフィス・商業施設/オフィス・一〇六社、商業施設・飲食店舗一五店、物販サービス一七店

・ビル人口/オフィス人口五〇〇〇人、来訪者五〇〇〇人。

◆キャフェフリア「ロイヤルガーデン」効率と機能重視、夜はビアレストラン

店舗面積約四九〇坪、客席数五四四席。WBGでは最大の店舗規模だ。

ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」を経営するロイヤル(株)の直営店で、マリブウエスト一階での出店だ。

この店は店名どおりの「キャフェテリアサービス」で、とくに昼食時の対応として、いかに短時間に客数を多く取るかという運営システムで、効率と機能を重視した店づくりとなっている。

キャフェテリアのサービスレーンは、店を入って右側に先端が位置しており、奥に向ってコの字型にアントレ、カレー、パスタ、ピザ、中国料理、ヌードル、丼物(ライス)というレイアウトで、客はトレイを移動させながら好きなものをチョイスすることができる。

単品価格は七〇〇~一〇〇〇円以下だが、専用プリペイドカードの「Uカード」(三〇〇〇円、五〇〇〇円、一万円の三種)を利用すれば、二割引きになり、低価格でメニューを選ぶことができる。

これらメニューは基本的には午前11時から午後1時30分(月~金)までのランチとしての提供で、この後、午後5時まではカレー(七〇〇~七八〇円)、スパゲティ(七〇〇円)、ピザ(八八〇円)とメニューを限定し、5時からはビアレストランに移行する。

時間帯によってメニュー構成や営業形態を変えるということだが、客層は平日がWBGのオフィスワーカーが主体で、土・日がメッセのイベント来場者や地域のファミリー客など。

このほかにパーティ、グループ客の利用もあり、客席キャパの大きさで、多様な利用形態を喚起しており、客数の確保は安定しているという。

客回転は昼三回転、夜一回転が平均的で、客単価は昼八〇〇円、夜一五〇〇円。売上げは日商一六〇~一七〇万円はキープしているようだ。

◆中国酒家「キャニーズ」コース料理

店舗面積一五〇坪、客席数一三五席の大型店だ。三井不動産グループの(株)キャニー(本社東京・日本橋)が経営する店で、姉妹店が新宿(三井ビル)にもある。

四川、広東料理を基本にしているが、北京ダックや香港の飲茶料理もあるという具合に、客のニーズに対応して多様な料理を提供している。

小皿料理からコース料理まで、トータルのメニュー数は一二〇品。もちろん、ランチメニューもある。

この中にあって、今年春からスタートした香港飲茶(一五品)は、価格も四五〇~六〇〇円前後とあって評判のものだ。

海老入りシューマイ(五五〇円)、フカヒレ入り餃子(五〇〇円)、オコワの蓮の葉包み(五〇〇円)、スープ入り肉まん(五五〇円)などが代表的なものだが、これは平日が午後5時から。土・日が午前11時30分からと営業時間を変えて提供している。

土・日はオフィスが休みになるので、集客力を高めるために朝から通して飲茶料理を提供し、気軽さをアピールしているということだ。

主力のコース料理はグループ客やパーティ対応のメニューだが、グランドメニューよりやや少なめのボリュームでありながら、品数を多くという考え方で、各八品目を四〇〇〇円、五〇〇〇円、六〇〇〇円という安さで提供している。

「一皿あたりのポーションは小さめですがトータルでみればグランドメニューに比べ二割くらいは安くなっていますし、質の面でも高いレベルのものですから、お客様のご利用は大きく定着しております」(沖島厚店長)。

メニュー企画については、沖島店長はベテランの料理長(加藤敏也さん)とともに年に数回、台湾や香港に出かけて研究するので、マンネリ化することなく、常にグレードの高いものが出せているという。

コース料理も二ヵ月に一回は替えている。固定客が多いだけに同じものは長くは出せないわけだ。

客層は平日はビジネスマン主体、土・日はファミリー客が多くなる。客単価昼一一〇〇円夜四五〇〇円。月商一五〇〇~一六〇〇万円。

◆酒・菜ざんまい「甲子」創業300年蔵元が直営

創業三〇〇余年というから西暦の一六九〇年代、江戸時代では元禄年間ということになるが、店の看板でもある「甲子正宗」は千葉県佐倉市近接地の酒々井(しすい)の地酒で、この店はその蔵元の直営だ。

WBG内の飲食店舗一五店の中では唯一の居酒屋で、夜は連日の賑わいをみせている。店舗面積四〇坪、客席はカウンター、テーブル、座敷を含め八五席で、蔵元直営の店にふさわしく、シックで品格のある雰囲気の店だ。

「高級感を備えながら大衆的な安さで料理を提供するのが、出店コンセプト」と話すのは飯田秀彦店長。

酒は甲子正宗の本醸造(一八〇ml三五〇円、三〇〇ml五二〇円、六〇〇ml一〇四〇円)をはじめ、ビール、ウイスキー、焼酎、ワインと一応のものを揃えている。

料理は一品料理九品(四五〇~一〇〇〇円)、刺身八品(七〇〇~五〇〇〇円)、串焼九品(三八〇円~一二〇〇円)、煮物五品(五〇〇~一〇〇〇円)、揚げ物八品(四五〇~一五〇〇円)など計三九品をラインアップ。

このほかに、生野菜二品(四五〇、八〇〇円)、お茶漬け六品(四〇〇~六〇〇円)なども提供しているが、メニューは絞り込まれている。人気メニューは、地鶏のもも串(四三〇円)、串かつ(五〇〇円)、唐揚げ(八〇〇円)ほか、鍋物や煮物などの季節料理(一〇〇〇~三〇〇〇円)。

料理はムダが出ないよう売れ筋メニューだけに絞り込んでいるが、板長(宮良親和さん)は二〇年のキャリアで、千葉県の会席料理コンテストで総理大臣賞を確得しており、腕前はたしかだ。

だから、メニューを絞り込んでいても、客はおいしさと価格の値ごろ感で納得している。しかし、客に飽きさせないために、春・秋二回のメニュー作りもおこなっている。

昼は日替わり定食八〇〇~九五〇円、煮魚定食九六〇円、牛スタミナ焼定食一〇〇〇円、松花弁当二八〇〇円などのランチサービスもおこなっている。

客層はビジネスマン六、七割、メッセなどからの客が三、四割で、客単価は昼一一〇〇円、夜三〇〇〇~三五〇〇円といったところ。

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