厨房のウラ側チェック(54)魚介類の鮮度を鑑るその4
前号ではATPの触りについて述べましたが、ここではATPとK値の基礎から応用までの話をします。ATP(アデノシン3リン酸、Adenosinetriphosphate)は生物のエネルギー物質であり、魚が死ぬと魚肉中にあるATPが酵素により1式の通りに分解されます。そして、ATPの分解生成物の総量に対する2式のような一部の生成物(HxR,Hx)の百分率(%)をK値といいます。
このK値は官能検査の鮮度と良く一致しますので、現状の分析技術の中においてはすぐれた鮮度指標となります。しかし、すぐれた鮮度指標といえども、理化学的検査の一面から見た検査結果の一つであることを認識して検査成績の数字を判断して下さい。この考え方は大変重要な意味を持っておりますので、必ず念頭に入れておくことです。
次のK値の分析法について説明致しましょう。ここで説明するのは現場で簡易的にできる方法をとり上げます。(株)環境科学コーポレーションの鮮度測定システムEACと第一製薬(株)のK値測定システム新鮮力は、現場で簡単にできるように工夫された、酵素による比色あるはい試験紙をカラーテーブルから読みとるようにしております。詳細は各社のカタログなどを見て下さい。
また、オリエンタル電気(株)の鮮度計は大変高価ですが簡単な操作性と精度の良さからいえば、すぐれ物です。現在はオリエンタル電気(株)から(株)千代田製作所に取扱いが移管されているようです。
本機(KV‐202)も酵素法を採用しており、酸素電極、マイコンを通じて自動化しています。また、本機は酸素電極を使用しているために、酵素などを工夫すればIMPやビタミンCなども測定できるメリットがあります。
次回は少々酵素反応も論じましょう。
食品衛生コンサルタント 藤洋