絶対失敗しないための立地戦略(43)第一印象は大切に
早急な判断下す時
立地への基本的マーケティング・リサーチ手法については一応ご紹介をしたので、これから、一般的な立地選定に際しての基本的注意項目や、重要なポイントのいくつかを何回かに分けてレポートしてみよう。
まず最初にご紹介したいポイントは、「第一印象はたいせつに!」‐‐である。
マーケティング・リサーチ手法の中で、勘だけに頼るな‐‐と何回も申し上げているので、「何だ、矛盾しているじゃないか」といわれそうだが、これは誤った先入観があったり、物件に対する思い込みの激しさや、成功したいがための何でも有利な方へと解釈しがちな人間独特の思考回路‐‐などによることが多いためである。
何の先入観も、誤った情報をインプットされずに、パッと見た時の純粋なファースト・インプレッションは、意外と正しいことが多いのである。
これは、人に対する印象と良く似ている。何の説明も受けず、他人からの「あの人はこういう人だ」といったような情報や伝聞も聞いておらず、地位や社会的背景もほとんど知らずに、いきなり紹介されたりした時の、あの第一印象である。多くの人がそういった経験をお持ちだと思う。後になって考えると、この時の第一印象が、鋭く、その本人の本質を見抜いていることが多く、驚くことが多い。
物件との出合いもこれと同じこと。フィルターにかけないで、じかにいきなり出合った時の印象を忘れずにたいせつにしたい。鮮烈な印象、爽やかな印象の残った物件は、たいへん良い立地、良い物件であることが多いのだ。
ただし、何回も申し上げるように、大半の場合、その立地に対する事前情報や、思い込み、人の噂などで、惑わされているケースが多すぎるので、このフィルターを取り除いて‐‐という条件をクリアして初めていえることであることを忘れてはならない。
さらにこの鮮烈な第一印象に加えて、いままでご紹介してきたマーケティング手法を駆使し、総合判断して見ることが極めて重要なことは言うまでもない。
人間はとかく惑わされ易い動物。何千万、何億という莫大な金額が消費される商売の基本中の基本である立地、物件に対する投資、判断は、経営上の決断の中でも最大級のイベントである。いくら第一印象をたいせつに‐‐と言っても、それだけでの成功率はせいぜい二~三割。これを逆の七割以上の成功確率にするためには、やはり、立地へのマーケティング・リサーチは絶対欠かせない手続きの一つであることを肝に命じたい。
以上のようなことを踏まえての「第一印象はたいせつに!」‐‐という教訓である。
野球のバッターと違って、商売上での三割バッターではどうにもならないのだ。成功率七割以上で、初めて成功、偉大なバッターといえるのである。
しかし、どうしても時間がなく、早急な判断が要求される時もある。そうした時は、フィルターをはずした、この“第一印象”をたいせつな判断基準の一つにしたいものだ。
今号の教訓は「第一印象はたいせつに!」である。
(マーケティングコンサルタント 戸田光雄)