施設内飲食店舗シリーズ 恵比寿ガーデンプレイス(東京・渋谷区)

1994.12.05 65号 6面

10月8日、二一世紀の街づくりをイメージした“ヨーロピアンテイスト”の複合都市「恵比寿ガーデンプレイス」がグランドオープンした。

JR恵比寿駅から徒歩五分。駅改札口から専用の動く歩道「スカイウォーク」がつながっており、雨の日でも楽に行ける。サッポロビール発祥の地、恵比寿工場跡地を再開発しての建設事業で、地上四〇階、地下五階のオフィスタワー「恵比寿ガーデンプレイスタワー」を中核施設にして、ホテル、住宅、デパート、商業・サービス、レストラン、スポーツ・文化施設など都市機能を集約した一大複合都市だ。

恵比寿ガーデンプレイスは敷地面積約二万五〇〇〇坪の広大な用地で、サッポロビールの前身である日本麦酒醸造が一八八七年(明治20年)に創業以来、同社の首都圏の主力工場として、九四年9月の工場解体まで一〇〇余年間操業していたところだ。

そこを再開発しての都市建設で、東京・山手線の内側においては今世紀最後の大規模開発といわれている。

施設内容は、高さ一六七m(地上四〇階、地下五階)の超高層インテリジェントオフィスビルをはじめ、地上二三階、地下五階建のウエスティンホテル、地上三二階二棟と地上一三階建ての高層住宅、さらには三越をはじめとする商業、飲食施設、文化・スポーツ施設など都市生活に必要な機能を集約している。

とくに飲食施設は充実しており、ファストフードから高級日本料理、フランス料理の三つ星レストランまでを揃え、ホテル内のレストランを合わせると三四店(約五〇〇〇席)と一大飲食ゾーンを形成している。

この中にあって、ビヤステーションは国内最大級の複合型ビヤレストランとして大きな話題を呼んでいる。

この店は六つの業態から成るビヤレストランで、総店舗面積一六〇〇坪、総席数一五一一席のスケールを誇り、連日の賑わいをみせている。

・大ビヤホール「フェストブロイ」(四八〇席)

二層吹き抜けの大ビヤホールで、一〇〇〇リットルのビールタンクが客席から見えるように配置されており、ビールへのこだわり、臨場感を演出している。

・ビヤクラブ「YEBISU倶楽部」(六九席)

バーカウンター席もあり、インテリアも洗練されているサロン的な雰囲気の店で、ビール愛飲家たちの社交の場という存在だ。

・ビヤレストラン「ビヤホール麦酒館」(四〇四席‐)

一階フロアの天井にビール醸造釜をあしらい、客席は大型円形テーブルを中心に一七二席、二階は多目的なパーティースペースで、着席で二三二人、立食で三〇〇人を収容できる。

・ビヤカフェ「グランプラス」(二一九席)

ピザやパスタをはじめとするヨーロッパ料理を提供。店内中央にはブリュッセルのカフェ・ブラッスリーにあるような大型円形バーカウンターを備えている。

・アジアンダイニング「オリエントエクスプレス」(二四一席)

オリエントエクスプレスを模したエキゾチックなインテリアが旅の雰囲気を演出する。料理は中国を中心としたアジアの料理。パーティー対応として八‐一六人収容の個室もある。

・和風ビヤレストラン「TOKIO」(九八席)

刺身、串焼、揚げ物など和食料理を提供する落ち着いた雰囲気の店で、中年のオジサンたちに人気のある場所だ。

これらの店はいずれもランチタイムで一〇〇〇円、夜三〇〇〇円前後の客単価で、年間一三〇万人の来店者を見込んでいるが、連日の大入りでこれは軽くクリアできる数字だ。

話題のサッポロビヤステーション‐‐国内最大級の複合ビヤレストランで6業態を展開、左手が恵比寿ガーデンプレイスタワー

ビヤレストラン地下一階(二層吹き抜け)の「フェストブロイ」ビール蒸醸機をあしらった照明が店のワンポイントになっている

事業主はサッポロビール(株)と住宅・都市整備公団で、建設事業は九一年9月から総額約二九五〇億円を投じて進められていた。

この施設は大型で質の高い都市機能の充実はもちろんのこと、敷地全体の約六割が広場や緑地などのオープンスペースで、ゆとりの空間が大きな特色となっている。

「豊かな時間」「豊かな空間」「創造・交歓・感動」が街づくりのコンセプトだが、開業九日間で八三万人の来街者、現在でも一日当たり九~一〇万人の来街者があり、新複合都市としての吸引力を大きく発揮している。

ガーデンプレイスで和洋中の多様なレストランが展開されている中で、最も注目されるのはミシュランの三つ星を獲得している「タイユバン」と「ジョエル・ロブション」の二店をジョイントした世界初の“夢のフランス料理店”だ。

地上三階、地下二階、延床面積七六〇坪。ガーデンプレイスのメーンストリート正面奥に位置しているしょう洒な建物(シャトー)がそれで、フランスの一八世紀末、ルイ一五世王朝(ロココ調)のデザインを再現し、また内装も建材から家具、装飾品まですべてフランスから調達した本物志向のものだ。

タイユバンとJ・ロブションはフランスを代表する三つ星レストランとして世界的にも知られた超有名店だが、サッポロビールは本物のフランス文化を日本に紹介するという目的で両店との提携に成功し、この二つの三つ星レストランをジョイントした世界初の夢のフランス料理店を誕生させたものだ。

シャトーの一階は仏文化のエスプリを気軽に味わえる「カフェ・フランセ」(五〇席)と、くつろぎをテーマにした「バー」(二四席)、二階はシャトーレストランの顔となる「メーンダイニング」(六六席)、三階は商談やパーティー対応の個室形態のダイニング「サロン」(八席、一二席、三〇席/三室)。

地下一階はレストランで提供する自家製のパンや菓子類を販売するブティック「タイユバン・ロブション」(地下二階はガーデンプレイス駐車場)というフロア構成。

料理は前菜、魚・肉料理、デザートまですべてが本場フランスと変わらない逸品揃いで、料金はカフェ・フランセでランチが三〇〇〇円から、ディナーが六〇〇〇円から。

メーンダイニングではランチのコース料理が七〇〇〇円と一万八〇〇〇円、ディナーコースが一万八〇〇〇円と季節の旬の食材を採り入れたメニューが二万三〇〇〇円(各消費税・サービス料込み)。

フランスを代表する三つ星レストランの最高級の料理が、日本にいながらこの金額で食べられるのは、消費が低価格志向といっても、決して高くはない。

会席、しゃぶしゃぶなど日本料理店でも普通これくらいの料金はとる。最高の料理を最高の雰囲気で、サービスの質など付加価値の高さからみても安い料金といえる。

ワインも厳選された逸品揃いだ。一本二〇万円クラスのボルドー(メドック)のグラン・クリュ・クラッセから四〇〇〇~五〇〇〇円の手ごろなド・ジュール(地方)ワインまで。

この数は三六〇種、一万二〇〇〇本以上のストックだ。

客層は男女のグルメ客やカップル、外国人など。世界でも例のない超一流店の“ジョイントレストラン”だけに、連日の満席状態でとくに週末は明年2月までは予約でいっぱいという状況だ。

「パリで生活されていたり、旅行されたりして現地の店をよく知っている方、それから大使館や来日のビジネスマンなど外国の方も多くお見えになります。この店はむしろ外国の方々に広く注目されているようで、こんな夢のレストランが日本にオープンしたということで、大変に羨やましがられているようです。ですから、外国の方が四割くらいいらっしゃっていますが、予約がとれないということで、残念がられてもいるのです」(シャトーレストラン(株)広報・企画営業担当課長羽立昌代さん)

シャトーレストランの存在は大きいが、オフィスタワーには日本料理の「吉祥」(九〇席)、静岡のとんかつの老舗「かつ好」(四五席)、中国料理「東天紅」(一四〇席)、「全国ラーメン日本一選手権」で優勝した評判の札幌ラーメン「満龍」(四六席)など名の通った店も出店しており、それぞれ強い集客力を発揮している。

◇施設データ◇

・名称/恵比寿ガーデンプレイス

・所在地/東京都渋谷区恵比寿四‐二〇、目黒区三田一‐四‐一三

・事業主/サッポロビール(株)、住宅・都市整備公団

・運営会社/恵比寿ガーデンプレイス(株)(サッポロビール一〇〇%子会社)

・グランドオープン/九四年10月8日

・総事業費/約二九五〇億円

・施設コンセプト/敷地全体の約六〇%がオープンスペースで、「ヨーロピアンテイスト」をデザインコンセプトとしており、「豊かな時間」「豊かな空間」をテーマに、「創造・交歓・感動」を表現した複合都市の形成としている。

・敷地面積/二万五〇〇〇坪

・建築面積/九七〇〇坪

・延床面積/一四万五〇〇〇坪

・施設概要/オフィス棟「恵比恵ガーデンプレイスタワー」(地上四〇階、地下五階建、延床面積四万九〇〇〇坪)▽商業施設「恵比寿三越」(地上二階、地下二階、延床面積一万八〇〇〇坪)▽飲食施設(二五店舗)▽ウエスティンホテル東京(客室数四四五、地上二三階、地下五階、延床面積二万二〇〇〇坪)

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら