’95外食産業今年の決め手 ここまで来た野菜工場 水耕栽培で大量・通年供給

1995.01.02 67号 16面

水と光と栄養素で野菜が工場生産できるようになった。昨年の猛暑による野菜不足など、天候に大きく左右される野菜は、供給が不安定。また、近年、安全な野菜への関心も高まり、無農薬野菜の安定供給も求められている。こうした要望に応え登場したのが、水耕栽培により大量生産でき、しかも通年供給可能な植物工場だ。すでに出荷を始めている夢の植物工場だが、外食産業との協力により新商品を開発するなど活発な動きを示している。

焼き肉の「叙々園」(東京都港区、03・3423・2646)は、焼き肉につきもののサンチュに代わるものとして、半結球のサマーレタスを使った。

焼き肉の本場韓国では、レタス科の野菜で、日本ではチシャと呼ばれるサンチュに肉を包んで食べるのが正しい食べ方。最近は、日本でもこの食べ方が定着して来た。

同社では、サンチュに代わる新しい食材を模索していたところ、(株)白河フーズ野菜工場(福島県白河市、0248・53・4551)生産のサマーレタスに出合った。三ヵ月の日時をかけ品種改良を重ね商品化に成功したものだ。

従来のサンチュは、破れやすく、肉を包んで食べる時、肉汁がこぼれるという欠点があった。試行錯誤の品種改良で、厚みもあり型が良く、肉に合うさっぱり味のサマーレタスとなり、「肉、味噌、野菜それぞれの食感が伝わる理想の葉」(皆川龍男統括本部長)と絶讃する。

当初一日一二〇球だった仕入れも、12月には七〇〇球と増量。価格は、一球一〇〇円と、露地栽培八〇円より割高だが「歩留まり一〇〇%とロスもなく、サッと水を通すだけで食べられ、チェーン店、焼肉協会加盟店での共同仕入れが可能となれば、スケールメリットを生かしての価格低下につながる」(申田裕治営業部長)としている。

第二弾として、サラダ菜を試作中。一日二〇〇球程度だが、数量の増加は確実という。

生産供給者である白河フーズ野菜工場は、白河農協が一〇〇%出資した販売会社(株)白河フーズの二一世紀を先取りする夢工場として、一昨年8月から稼働を開始した。

「菌数少なく、洗わずに食べられる野菜を安定供給できたら」(菅原修一植物工場長)と、大消費地に近く、水源が豊富な地の利を生かしての工場設置だ。安全・安心・安定した水耕栽培の野菜は、量販店を中心に流れているが、今後は「外食産業への直接取引を図りたい」(菅原氏)方針だ。

一〇〇〇平方メートルの工場は、二割を人工光室、六割を補光室で占められる。人工光室は、植物育成用に開発したナトリウムランプを使用して、理想の光環境を作っているが、工場内の気温、光、CO2濃度や養液濃度、液温などの環境要因の制御は、すべて一台のパソコンで行っている。

補光室は、軒高の温室を採用、赤外線カットフィルタにより、育成に必要な光だけがフィルターを通過し植物に届くシステム。また、移動ベンチシステムを導入することで、栽培ベッドがボタン一つで移動でき、省力化に効果を上げている。

設備投資額は、六〇〇〇平方メートルの敷地で二億円とかなり高いが、農水省のバックアップで一定基準を満たせば、半額の補助金が得られる「水耕栽培施設資金」がある。

白河フーズ野菜工場で、実験栽培から商品化が可能となると、二、三人共同で工場設備を持つ農家に本格的生産をはかる。

「二〇~三〇代の意欲的な農家が、三~五年を償却目途に頑張っています」(菅原氏)

栽培品種は、三つ葉、葉ネギ、トマト、サラダ菜、サマーレタスなどがあり、これからは、「ホワイトセロリ、春菊、採算に合わないが小松菜などをやりたい」(菅原氏)と意欲満々。

こうした夢工場野菜は、大量の電力消費によるコスト高になるが、農家の後継者不足から確実に工場生産傾向は強まるだろう。

培養液により色合い、味、型すべてが、自由自在に操作できる野菜工場。常識を破った野菜たちが市場を賑わすのもそう遠くなさそうだ。

みずみずしく、たくましく育った野菜は、すべて同じサイズ。後ろの棚には四季を問わず実をつける甘いイチゴが栽培されている

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