最新ニューヨーク外食事情 価格・食材・メニュー

1995.01.16 68号 3面

実際の一ドルは、人々の平均収入や物価からみると一七〇円~二〇〇円の価値がある。朝食から順に、平均的アメリカ人が外食に使う額をみてみよう。

朝は道端のコーヒーとドーナツのセット一ドル~一ドル五〇か、果物の屋台からバナナ一本三〇セントとかをバラで買ってオフィスに持ち込む人が多い。忙しいビジネスマンはパワー・ブレックファストといってホテルの中や駅の近くで朝食兼会合を行う場合があるが、その場合も高くて七ドル~一〇ドルまでである。

昼はデリのサラダバーで好みのものを量り売りしてもらうか(サラダバーといってもパスタや中華風バイキングのものもあり、ボリュームがある)、またはレストランでランチメニューを頼む。この時が一番レストランが混み合う時間帯である。ディナーの時間帯だと高価なものが安くなるというメリットもある。平均価格は六ドル~九ドルである。高級なところではまれに一二ドル程度のものがあるが、一般サラリーマンはまれにしか利用しない。

成功例として、これまでおやつ程度にしかみられていなかったピザを、深皿タイプという一食に十分なボリュームで供し、しかもランチメニューに限り一〇分以内で出せます、というウノピザや、弁当類に力をいれている日系の「すし亭」が挙げられる。ランチで客をあらかじめつかんでおくことは、ディナーの客を呼ぶことにもつながるし、もはやディナーだけでは生き残っていけないほど競争は激しい。

七ドル前後のサンドイッチから、五〇ドルを超えるコース料理まで、ディナーの価格は一番ばらつきが激しいが、結果的に、ランチで人気のある店はディナーでも力を発揮している。

レストランで一番人気のある食材は、牛肉でも豚肉でもなく、意外にも鶏肉である。スーパーでの値段も、七面鳥より高くなっている。もちろん七面鳥より味もよいし、皮や脂肪を除いたら低カロリーになるというので、ヘルシーだと受け入れられてもいる。わざわざ皮と脂肪を除いてある鶏肉を使った中華風炒め物などが人気のメニューだ。鶏肉で作ったソーセージやハムなどもあり、よく売れている。

魚類では、まずサーモン。ほかは白身の魚とエビぐらいしか置いていないレストランが多い。スーパーマーケットの食料品売場でも肉と魚の売場面積比は八対二ぐらいの差がある。魚は低カロリーで注目されているとはいえ、まだ一般になじみの深いものになっているとはいえない、というのが現状である。

ただ冬になるとニューヨークではカキやハマグリがおいしくなるので、オイスターバーといわれる魚介類専門のレストランで、生ガキや生ハマグリを賞味する姿も見られる。ただ酢とレモンとケチャップしか一緒についてこないので、なれない日本人には少し抵抗がある。

魚も野菜も、ニューヨークでは店長自ら市場に出かけるということはまれで、たいていは宅配の業者にたのんで持ってきてもらう。すし屋が扱う鮮魚とて例外ではない。

選択の幅が大きければ大きいほど、ぜい沢だという考え方がアメリカにはある。日本の「おまかせ」とは正反対の思想で、普通のさほど高級でもないレストランに入ってハンバーガーを注文しても、焼き方はレアかミディアム、ウェルダンか、玉ネギ、トマトの有無、マヨネーズかケチャップかと細かくきいてきてわずらわしいくらいだ。

これまで単一商品を扱う店は一段軽くみられがちな傾向にあった。しかし最近、人気があるのはコーヒーバーである。狭い店内で扱うのはコーヒーと軽いクッキーや菓子パンだけ。それでもひきたての新鮮なコーヒーは人気があり、最近ぞくぞくと似たような店がオープンしている。

人気の店は内部がやや広めでテーブル席があり、最新の雑誌や新聞がたくさん置いてあること。こう書くと日本の喫茶店のようだが、コーヒーの種類は少ない店で三~四種、入れる牛乳もスキムミルクか普通の牛乳か、はたまた両者の混合「ハーフ&ハーフ」かと、このような小さな店にも選択を持ちこみたがるのはアメリカ人だからだろうか。

セルフサービスで、カウンターで紙コップを受けとりお金をはらって一人で席につく。値段は一杯約一ドルと、街のあちこちにあるデリ(二四時間営業の小さな食料品店)で買う平均一杯六〇セントよりは大分高めだが、おいしいコーヒーは着実に今ニューヨークに根をおろしはじめているようだ。

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