特集 お好み焼き・たこ焼き・もんじゃ焼き 東京進出相次ぐ関西の味
たこ焼き、お好み焼き、もんじゃ焼きなどのいわゆる和風ファストフードは、親しみやすさや手軽さに、和食人気も手伝って若い女性を中心に根強い人気がある。
お好み焼きの歴史は、江戸時代後期の大衆的な菓子であった「ふの焼き」がその原型。明治から大正にかけて駄菓子屋、屋台店の子供相手の商売となり、「文字焼き」「どんどん焼き」「じじ焼き」(広島では戦前まで一銭洋食)から、やがて花柳界を中心に大人相手の商売に変わり「お好み焼き」と呼ばれるようになったという。
お好み焼きは、小麦粉と具を混ぜ合わせて焼いて食べるのが関西流だが、広島流は具を重ねて焼いていくのがその特徴というように素材はシンプル。外食が産業と呼ばれ、システム化された各チェーンレストランが全盛の中では、生業店が大部分といっても過言ではない業界だ。
パフォーマンスも関西では味のうち
数多いチェーンを展開する「千房」((株)千房=本社・大阪、四六店舗、売上高五一億円)は「ほかの店に真似の出来ない味は人間味。関西のお好み焼きは、客の前で作るパフォーマンスも味のうち」と言う。
他のチェーン店でも標準店舗の売上高は一〇〇〇万円を超えている(売上げ原価率約三〇%)といった声も聞かれ、若者やマスコミで注目されている。洋風ファストフードと比べて荒利は高い。
東京だけで五〇〇件以上はあるといわれる広島風お好み焼き店。「広島風お好み焼きをメニューに導入して一ヵ月で客数が一〇〇〇人以上も増えた」(鉄板焼ゆうかり=東京、JR東日本レストラン(株)経営)というほど。
それにしても、チェーン店の課題は、ラーメンなど他の飲食業と同じで、社員教育、商品力、店舗力など血の通った支援と、いかにオペレーションシステムの確立が出来るかだ。
東京・月島などを中心に約六〇件の店が軒を並べるもんじゃ焼きは、二、三年前の第二次ブームからここへきてメニュー、味など店によっての繁盛店、いわゆるバラツキが出ているという。そのため「新しいメニューの開発は怠れない」(錦=東京・月島)。
一七年前、白川眞士さんが一八歳の若さで五坪の店からスタートさせた関西たこ焼きチェーン店のパイオニアが「白川」(経営=ホワイトリバーシステムコーポレーション)。社員教育一つでもマニュアル化されたチェーンレストランが多い中で、“光明の念”“幸福の念”の信念を貫き、明るい笑顔、言葉、表情を大切に、朝礼では全従業員が三〇分の合掌でイメージトレーニングを行うなど、接客サービスでは飲食業界でも定評がある。
また、メニューも直営店では四品だが、FCはリスク回避のため二品。人気No.1はスタンダードな「たこ焼」(六個入四〇〇円)、次が「キムチ風味豚肉」、キャベツ・ニラの入った「スタミナ焼き」など。昨今は関西と関東の距離感が縮まり、出店しやすくなったことなどから、一昨年から関東にも進出。吉祥寺店(直営)、横須賀店(FC店)をオープンさせたが、中でもテークアウト、イートインの「横須賀店」は二〇席で月商九〇〇万円前後を売上げる超繁盛店だ。
さらに、東京・渋谷の京風たこ焼き戦争の火つけ役、東急ハンズ前の「たこ焼亭」(経営母体=東京コンチネント)も平成4年に一号店を開店。五坪の店舗(テークアウト)で月商九〇〇万円というから驚く。ここでの成功の要因は具材の豊富さ。中身も小麦粉と山芋、豆粉を主に一三種の粉を配合。タコは冷凍でなく刺し身用の蒸したタコ(価格八個入五〇〇円)。ソースはショウガ醤油味、中辛、辛口、普通の四種類。
いずれにしても、何といっても親しみやすさでは、お好み焼き、もんじゃ焼き、たこ焼きが和風ファストフードではNo.1であり、外食の一部門としての定着が期待される。