電磁調理器ケススタディー 「ザ・ステーキヤスダ」「うどん茶屋・四万十」「吉兆」

1995.03.06 71号 14面

ステーキレストラン「ザ・ステーキヤスダ」(千葉県柏市、0471・48・0298)は、電磁調理器と電子グリラーを主力とするオープンキッチンの電化厨房を展開、排熱や油煙の少ない快適な環境による調理で客の目を楽しませている。オープンキッチンを電化したきっかけは関税引き下げで牛肉の価格が下落しているため。市販品との競合激化を想定して、快適な空間と目の前で調理するパフォーマンスで差別化を図った。

オープンして三年を経過するが、排熱や油煙が少ないため壁や天井は以前のまま。当然メンテナンスは一度もない。換気はエアコンの空調だけで十分だという。

余熱を維持する光熱のコストが減るのもメリットだ。オープンキッチンの分厚い鉄板の熱をガスで立ち上げるには長時間を要する。そのため余熱を維持する種火は欠かせないのだが、電気は熱を立ち上げる瞬発力に優れ、オン・オフも楽で、種火に値するコストは皆無なのだ。

「清潔感が保ててコストが安いのがメリットです」(芝田日出男店長)。だが、「ソースを使った料理などは焼色が薄い」とするデメリットもあり、グリラーとの併用(グリラー部に小型ダクト有り)を図っている。電気とガスの長所をまめに使い分けるのがコツだという。

鍋物やうどんなど和食を主力に展開する「うどん茶屋・四万十」(東京都台東区、03・3835・1077)は、誘導加熱器をテーブルに組みこんだ電磁テーブルを座敷に設置。排熱の少なさを利用して座敷の客席を増やすほか、電気制御が正確なため安心して客の手に加熱をまかせている。

座敷の鍋料理はガスコンロで加熱するケースが多く、その排熱による熱気が刺し身やドリンクなどに悪影響を及ぼすと懸念されている。そのため、コンロの熱気を受けないだけのテーブルスペースが必要であった。電磁テーブルはこうした影響が低いのでテーブルをスリム化して台数を増やせるというわけだ。直火が出ないので人体が近づいても安全性が高いのはいうまでもない。

また、鍋料理は素材を吟味して揃えても加熱は客の手にまかせなければならない。加熱の不手際から素材を台なしにされるケースもあって、店側のジレンマを招いていた。その点、電気は出力を簡単かつ正確に制御できるため、ポイントさえアドバイスすれば安心して客の手にまかせられるという。

さまざまなメリットがあるが、「直火でない部分が特に大事」と、加熱を客にまかせる店舗ならではの“安心感”の利点を強調している。

懐石料理の東京「吉兆」(東京都千代田区、03・3504・0777)は、気軽に日本料理を食べてもらおうと、帝国ホテル地下に東京進出第一号店として一二年前にオープンした。

当初、他チェーンにない「すき焼」「しゃぶしゃぶ」をメニューに取入れたことから、客席の一三テーブルすべてに電磁をはめ込んだ。

電圧一〇〇V対応の電磁で、出力も弱く、火の通りの悪い野菜は薄めに切り調整したという。

「一〇年使い、二年前に、真ん中に溝のないフラットなテーブルで、しかも出力の強い二〇〇V用電磁に買い替えました」(伊藤清道営業支配人)

場所柄、昼間は観劇、ショッピングを楽しむ主婦、夜は接待客や外国人が多く、懐石料理メニューに組み込まれた炎のない不思議な鍋料理は、人気を呼んでいる。

「電磁の接面上のみが熱せられるため、周りにビールなど冷たいものを置いても温まらない。子供連れにも炎がないので安心して食べてもらっています」と安全性を強調。

電磁だからできる料理として、テーブル上で蒸し物の茶碗蒸しを、独自に作らせたセイロで蒸しながら提供するメニューがある。

「目の前で湯気をたてているアツアツが食べられる」懐石料理は、家族連れには好評という。

第二弾として、「土鍋を使って、すっぽんスープ、雑炊をやってみたいが、懐石料理のイメージに合った鍋が見つからない」と残念がるが、電磁だからできるメニューを少しずつ増やしていきたいと夢をふくらませる。

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