給食特集 大量調理の新兵器「クックチルシステム」

1995.03.20 72号 10面

大量供給のための新兵器「クックチルシステム」は「このシステムなしには業界の発展は考えられないという観もある」(東京誠心調理師専門学校広瀬喜久子校長)と言われるほど、二一世紀の一括大量調理に向けて期待されているシステムである。半面、一括大量ゆえのリスクも大きく「コストダウンのみが先走り、その効用とリスクという面では、本当の意味でのシステム理解はこれから」(同氏)。

他に先がけ昨年4月からブラストチラーによるクックチル方式を本格稼働させてまもなく一年になる(株)日野フードセンター(東京都昭島市、0425・45・7660)の事例を紹介し、その効用とリスクを考えてみたい。

同社はそれまで四〇ヵ所の事業所に二〇ヵ所の厨房で約一万二〇〇〇人の給食を提供していた。これを一ヵ所大量生産に切り替えたことにより、直接調理人は一二人で朝8時から夕方5時までの八時間勤務となり、木・日曜日は生産だけ休日にしている。

一人当たりの平均生産高は一人七〇食だったものが現在は一二人で一万六〇〇〇食作るので、一三・四倍の効率となった。最高は三万食も可能だ。

ほかのメリットとしては(1)温食提供と導線の改善=クックチルでカフェテリア方式を採用できたため食事提供を待つ列が広がり、待ち時間が短くなった(2)味の均一化(3)一括購入による食材費の低減=食材比率が三~五%減となった(4)省エネ=月当たり二〇〇~二五〇万円の低減などがあげられる。

新システム導入の陣頭指揮を取ってきた川瀬良太郎取締役購買部長は「オール電化で3Kを払拭する職場環境づくりを行った。厨房の世界は長老と酋長の頭の切り替えが大切」。また「二一世紀に向かってバスは走っている。乗り遅れないようにしなくてはいけない」とも言う。

では、バスの乗り心地はどうだったのか。リスクの面では「基本に忠実に安全運転が第一」。稼働するにあたって一番のネックになったのは運搬時の保冷の一定化である。都下から神奈川県の厚木、鶴見、群馬と配送時間が二~三時間かかるところもある。冷蔵機能の高いアルミ保冷庫を利用し、到着現地では必ず浸温をして一〇度以上になっていたら捨てることをしたが、昨年の猛暑でも捨てることは一度もなく、大いに自信をつけた。

基本的にクックチルは五日の鮮度日内に喫食しなくてはいけない。同センターでは今日調理、明日配送、明後日喫食を基本にしている。日曜や祝祭日が入ると四~五日目の喫食となるが、従業員はカレンダー通りに休める。

1月の阪神大震災の影響で一部工場の部品が届かず、営業停止という事態があった。一日分の食事を一日延ばすと調理してから六日目となったため廃棄処分とした。計画調理のため、急の予定変更には弱い部分がある。

細かいことでは冷蔵保温、再加熱に向くメニュー、向かないメニュー、作り方などとまどうこともある。日本人の好きな天ぷらは向かないため外注して使っている。新システムと同時に始めたカフェテリアも立ちあがり時のロスは二〇%と高かったが、最近では四~五%。それを従業員用に回すので実際はゼロに改善できた。

〈セントラルキッチン概要〉

▽敷地=一二六一平方メートル、建物面積七四二平方メートル、床面積一七六八平方メートル▽人員CK直接員三〇人(フル稼働時)▽稼働時間=午前7時~午後10時(フル稼働時)連続二交替〈主要調理設備〉▽自動炊飯装置=一ライン、IH炊飯器(五〇台)+保温ジャー(一五〇台)+無洗米▽スチームコンベクション=加熱調理(七二度以上)六台▽ブラストチラー=急速冷却設備(九〇分以内に三度)九台

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